このアイデアは共有したい! 「ぬいぐるみ おとまり会」
図書館は地域の貴重な財産です。ここのところ各地で、図書館をただ本の貸し出しを行う施設ではなく、地域の拠点として活性化しようという動きができてきているようです。平成26年には、文部科学省が「図書館実践事例集 ~人・まち・社会を育む情報拠点を目指して~」という冊子を発行。参考となる様々な取り組みが紹介されています(http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/jirei/index.htm)。
そんな中、派手ではないけれど、とても面白い取り組みを、「市報さが 平成28年1月15日号」に見つけたのでご紹介します。題して「ぬいぐるみ おとまり会」。「おとまり会」といえば、園児が幼稚園などに1泊する…というのが定番ですが、どうやら佐賀市立図書館・大和館に宿泊するのは「ぬいぐるみ」のよう。「あなたのかわいがっているぬいぐるみを、図書館にお泊りさせませんか?」と呼び掛けています。そして、ぬいぐるみたちの様子をこっそり写真に撮ってプレゼントしてくれるのだとか。
子どもたちにとって、ぬいぐるみはとても身近な、そして大事なお友達。どんな思いで「おとまり会」に行かせるのでしょうか。自分が「おとまり会」に行く勇気をもらうためでしょうか。自由に本を読ませてあげたいという思いでしょうか。いつも登りたいと思っている本棚での冒険を期待してのことでしょうか。考えただけで、思わず微笑んでしまうようなイベントです。
一見、突拍子もない発想のように思えますが、図書館にとってはそうではないのかもしれません。本の世界では、ぬいぐるみといえども意思を持ち、よく動き、そして大活躍するのですから。くまのプーさんもそうですし、ミヒャエル・エンデも「カスペルとぼうや」で道化師のぬいぐるみの仕事ぶりを描いています。マージェリィ ウィリアムズの「ビロードうさぎ」は娘の大のお気に入りで、何度も読み聞かせさせられたのを覚えています。こうしたぬいぐるみが命を持ち、活躍する物語の中から、子どもたちは自由な発想や勇気、思いやりや愛…といったことを、知らず知らずのうちに学んでいくのでしょう。ぬいぐるみの「おとまり会」は、こうした学びを夢いっぱいに広げてくれるに違いありません。
子どもだけでなく、私もちょっと参加したくなりました。息子が昔遊んでいて、今は埃をかぶっているクマの「くーくん」をちょっと楽しませてあげたい。そして「くーくん」の楽しんでいる様子を写真に撮っていただいて、私もクスッと笑いたい…なんて。一人ひとりが読書を楽しむように、ぬいぐるみの「おとまり会」も、子どもだけでない人それぞれの楽しみ方がありそうです。