あの泣いていたママも救われたかも…夜間に女性職員が話を聞く試み
もう十年以上前のことです。生まれたばかりと思われる赤ちゃんを抱いた若いママが、泣きながら、裸足で交番に駆け込む姿を、たまたま見かけたのです。昼間とはいえ、肌寒い季節。ママはパジャマにカーディガン姿、赤ちゃんは肌着です。大丈夫なのかしら…。ただならぬ様子に、私は気になって仕方ありませんでした。
気になる気持ちを抑えきれず、少し時間をおいて、交番を覗いてみました。ママは交番のスリッパを履いていたものの、赤ちゃんを抱いてうつむいています。男性の警察官は、傍らで立ちつくしたまま。私は家に戻り、子どもが使った赤ちゃん用の服を持って、再び交番に向かいました。
「赤ちゃんはまだ体温調整ができないので、よかったら、これを着せてあげてください」。そう警察官に告げると、ママは突然大きな声をあげて泣き出しました。彼女と私は、もちろん面識がありません。でも思わず抱いた彼女の細い肩から、彼女の辛さ、痛み、悲しみ、そして憤り…そんな気持ちが、痛いほど伝わってきました。
ママが落ち着くよう、我が家の子どもたちの赤ちゃんのころの話をしていると、ポツリポツリと、そしてやがて一気に、彼女の身に起きたことを話してくれました。産後の生活の大変さ、それを理解しない夫と些細なことで喧嘩したこと、言い合ううちにDVに発展したこと、とても怖かったこと…。私は何の助けもできませんでしたが、赤ちゃんのように泣く彼女の肩を、ただ母のように抱きしめていました。
この出来事を長野県高森町の『広報高森 2016年5月号』の「チームほっ?たかもり」の取り組みを見て思い出しました。役場の女性職員で構成される「チームほっ?たかもり」が、月1回、夜間女性相談窓口を開設し、対応するといいます。あのママも、産後の生活が辛い、夫の理解や協力が得られないといった時点で、話を聞いてもらえていたら…。
ジェンダーフリーといった問題などとは違う次元で、女性には女性の助けが必要な場面がままあります。「チームほっ?たかもり」は、町内の女性同士が「つながる」ための活動を推進するそうです。女性同士が「つながる」ことで、決定的な大きな問題になる前に救うことができるよう、私も強く願っています。