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「ネウサラカムイの役割」に、秋の恵みを思う

「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事
あんびるえつこ

2017.10.02 広報びらとり 2017年9月号 北海道平取町

 秋はイベントの季節ですね。おいしいものを味わえるもの、身体を気持ちよく動かすことができるもの…そんな魅力的なイベントは、行ったことのない街にも足を運んでみようという気にさせてくれます。

 一方で、もっと深いところで、じわじわと確実に人を動かす力を発揮するものもあります。それはその地の「文化」です。「文化」を知ると、「いつか行きたい」という念願のような思いが芽生えてくるもの。イベントでの集客のような即効性はないけれど、「文化」もまた、確実に人をひきつけることができるのではないかと思うのです。

 そんなことをぼんやり考えたのは、北海道平取町『広報びらとり 2017年9月号』の「博物館コラム『ネウサラカムイの役割』」を読んだからです。

 「ネウサラカムイ」って、何かご存知ですか? 一見すると、ただの木の枝のような棒きれ…ということですが、実は「よもやま話をする神様」。この「ネウサラカムイ」の誕生には、アイヌの人々の食べ物の恵みに対する深い感謝の思いがあることを、この記事で初めて知りました。

 「ネウサラカムイ」は、仕留めた熊をすぐに村に持って帰れず、その場に残して行かなければいけないとき、熊が寂しくないように話し相手として、その場で作って熊の傍らに立てておくのだといいます。アイヌにとって、熊はキムンカムイ(山の神様)。人間の獲物になるということは、自らの意志でやって来てくれたということなのだそう。 「ネウサラカムイ」からは、そんなキムンカムイ(山の神様)への感謝の思いが伝わってきます。

 今の時代、特に東京に住んでいると、白色トレーに切り身になってのっている食べ物をスーパーで買ってくる…というのがあたりまえになっています。そんな生活の中で、「食べ物」となってくれた生き物に思いを馳せ、感謝の気持ちを持つことは、とても難しいものです。記事を読み、ああ、アイヌの人々は、こんなにも恵みに対して深い感受性を持ち、「カムイ」(神様)の存在を思い、感謝のうちにいただいていたのだと、心を揺さぶられました。そして、毎日、あたりまえに調理しているトレーの上の生き物への感謝の気持ちを思い起こすことができたのです。

 調べてみると、北海道平取町の平取は、「びらとり」と読み、アイヌ語「ピラ・ウトル」(崖の間)を意味しているのだそう。豊かな自然の中で育まれたアイヌ文化を求めて、崖の間の平取町を訪れてみたいと切に思いました。

 

博物館コラム「ネウサラカムイの役割」

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