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近郊都市が本気で取り組む「農地を再び」

「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事
あんびるえつこ

2018.02.05 広報あつぎ 第1272号(平成30年2月1日発行) 神奈川県厚木市

 私の生まれ育った神奈川県横須賀市と、今回ご紹介する広報紙『広報あつぎ』を発行する神奈川県厚木市とは、どこか似ているような感じがして、昔から親近感を覚えていました。ともに、東京や横浜といった大都市の通勤圏にある中堅都市。それに私の母校・県立横須賀高校の前身が神奈川県の旧制第4中学であるのに対し、県立厚木高校の前身は旧制第3中学ということで、兄弟のような学校が存在する市という、個人的な思い入れがあるせいかもしれません。

 その厚木市が、広報紙で多くのページを割いて、「農地を再び 厚木の農業が危ない」という特集を組んでいました。なんでも、厚木市は農家の約7割が後継者不足なのだとか。こうした後継者不足は耕作放棄地を生み、耕作放棄地は公衆衛生の問題などを引き起こします。

 記事には、そうした状況を打開すべく厚木市がおこなっている、さまざまな取り組みが紹介されていました。新規就農者の支援だけでなく、都心からのアクセスのしやすさを考えて「滞在型体験農園」や「貸し出し型農園」など、今どきの近郊農業ならではアイデアが取り入れられています。

 実は、私の小さいころの夢は、農家にお嫁にいくこと。両親に頼んで、家の庭に小さな畑を作らせてもらい、トマトやきゅうり、なすなどを育て、その成長を楽しみにしていました。手塩にかけて自分で育てた野菜のおいしかったこと!

 今、消費者教育に携わり、『地産地消』をおすすめしていますが、その根底には、幼少時に自分で作った野菜を「おいしい」と思って、頬張った原体験があるような気がします。成長を待ち、育み、いただくという行為は、『地産地消』の野菜に、ただ新鮮であるという以上の「おいしさ」を加えてくれます。

 第3次産業が主流になり、近郊都市の住人の多くが、都心に通勤する人やその家族となりました。たとえ近所に農地が存在していても、自らが関わる機会はなく、いつしか農業は遠い存在になってしまいました。欲しい野菜は、スーパーに行くとすぐに手に入り、野菜を手塩にかけて育て、成長を待って手に入れるということを想像するのも難しくなっています。便利になった反面、時間をかけることで得られる幸福を失っている…といえるかもしれません。

 農業を身近にする、厚木市の「滞在型体験農園」や「貸し出し型農園」といった取り組みは、農地問題を解決する以上の、人間としての幸福感を取り戻すための取り組みでもあるように思えます。

 私も、もう一度、あの「おいしい」野菜を食べてみたいと、最近思うようになりました。

 

農地を再び 厚木の農業が危ない(1)

農地を再び 厚木の農業が危ない(2)

農地を再び 厚木の農業が危ない(3)

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