工夫された紙面づくり
広報紙の紙面づくりには、担当者の工夫が表れます。
今回紹介する福井県越前町の広報紙には、まさに広報の担当者が工夫して作成した記事が掲載されていました。
その記事は、「越前町の指定文化財を訪ねよう 59 ―日本遺産編―」です。
表題だけ見れば、文化財を紹介する記事だということだけで、特に何の変哲もないものです。ですが、実際の記事は、学芸員MとE子の会話によって構成されています。二人の会話を通して、江戸時代の越前焼を紹介するという記事なのです。
学芸員MとE子が実在して、実際に二人の間で交わされた会話を編集するという方法を採ることも可能でしょう。それはそれで編集作業が大変ですが、素材があるので、それを文字起こしして成形すれば、それで済みます。
誌面を見る限り、二人にモデルがいたとしても、実際に越前焼について会話したということはなさそうです。おそらく、広報の担当者が二人の会話を考えて、それを記事にしたのでしょう。
こういう会話形式の記事を作るのは簡単なようで、案外難しいものです。特に、この記事の場合、学芸員には過不足なく越前焼について説明することが求められるので、どうしても会話ではなく、普通の説明文のようになりがちです。そうならないように自然な会話の中に必要な情報を入れ込んで見せたというところに、広報の担当者の工夫の跡が見えます。
会話形式の記事は、他の記事と比べて読みやすいものです。単なる説明文であったとすると少々読みにくいような内容でも、会話のやりとりというかたちをとることで理解しやすくなるということがあるのです。
伝えたい内容をどのように伝えるのか。広報紙の編集における担当者の腕の見せ所です。