夏休みに読みたい…「3・11 震災文庫」
宮城県仙台市の広報紙『仙台市政だより 2018年7月号』に、コラム「3・11 震災文庫を読む」が連載されています。このコラムには、東日本大震災を語り継ぐために、市民図書館に設けられた『3・11震災文庫』に所蔵されている約1万冊から選んだ本が紹介されています。
今回、コラム「3・11 震災文庫を読む」で紹介されていたのは、『3・11と心の災害』(蟻塚亮二、須藤康宏/著・大月書店)と、『東日本大震災4年目の記録 風評の厚き壁を前に』(寺島英弥/著・明石書店)の2冊。河北新報社論説委員の寺島英弥さんがわかりやすく解説されています。
『3・11と心の災害』は、原発事故の衝撃や、故郷を離れた悲しみや異郷での暮らしによるストレスなどからもたらされた心の傷についての、医師による著作。また、『東日本大震災4年目の記録 風評の厚き壁を前に』は、実態のない風評について、福島第1原発事故の被災地を取材してきた著者によって書かれたものです。
いずれも、現場をよく知る著者によるものであり、人の「心」に焦点をあて、震災がもたらしたものについて書かれています。
モノは壊れると目に見えてわかります。新しく作られた道路などを目にすると、ああ、復興が進んでいるのだなと、私たちは安心してしまいます。しかし人が受けた心の傷や、偏見という心の壁は目に見えるものではありません。東京に暮らしていると、東日本大震災は距離的にも遠く、また年を追うごとに時間的にも遠いものになり、被災地にあっては未だ現在進行形である、目に見えない心の傷や風評被害について、心を寄せることが難しくなってきています。『3・11震災文庫』は、もしかしたら被災地に住んでいない人たちにこそ必要なのではないかと、考え込んでしまいました。
もうすぐ、おとなも子どもも、普段より、ゆっくり本に向き合うことのできる夏休みがやってきます。『仙台市政だより』のコラム「3・11 震災文庫を読む」を参考に、夏の1冊を選んでみるのもいいかもしれません。