「農業力」を四日市市民で広く共有する、大特集の意義
夏休み中は地方での仕事が増えるため、バカンスに向かう家族連れと一緒に飛行機や新幹線に乗る機会が多くなります。昨日も山口県の徳山駅から東京駅までの4時間余り、新幹線の車窓を眺めたり、うとうとしたりしながら過ごしていたのですが、不意に子どもがお母さんに質問する声が耳に入ってきました。「ねえ、この畑は何を作っているの? ほら四角くなっているとこ」。
四角くなっている?という謎の言葉に、思わず私も窓の外を覗いてみると…。そこにあったのは、太陽光パネル。ビニールハウスとも違う、四角い太陽光パネルが何を作っているのか、気になったのでしょう。
そういえば、ここ数年で車窓から見える農地に、ものすごい勢いで太陽光パネルが設置されています。件の子どもにお母さんが眠そうに「電気!」と答えていたのですが、田畑は「食べ物」を作るところから、「電気」を作るところに急激に変わっていっているようです。果たして、これで日本の農業は大丈夫なのかと、一抹の不安を感じてしまいます。
三重県四日市市の広報紙『広報よっかいち NO.1506 8月上旬号』では、「四日市の農業力を知る」と題して、市民に市内の農業の問題点と取り組みを知らせる特集が組まれています。四日市市でも、他地域と同様に農業人口の減少、農業従事者の高齢化や後継者不足、 耕作放棄地の増加といった問題があることを指摘。こうした問題に対し、生産物の価値を高め所得を向上させていく「6次産業化」や、新規就農者への支援、耕作放棄地を管理する人への支援、地産地消の推進などで、四日市の農業を支えようとしていることが紹介されています。農業に関わっていない市民にも、広く問題を共有してもらおうという、熱のこもった大特集です。
最近、夫と一緒に、都会の我が家のマンションのべランダに小さな菜園を作りました。少しずつ植物が育ち、それをいただくという行為が、こんなにもありがたい、心躍る経験であるとは、この菜園を始めるまで知りませんでした。私たち夫婦はともに農業とは無縁の育ちですから、農耕社会が始まった遥か昔からDNA刻まれてきた、収穫を喜ぶ感情なのかもしれません。
農業に携わる人たちの高齢化は、農業の衰退を招きます。今後は農業と無縁であった人たちにも広報することで、農業への垣根を低くし、新たな担い手を確保していくことが重要になってくるでしょう。本来、私たちは作物を育て、いただくことに喜びを見出していたはずなのですから、きっと手を挙げる人が現れるに違いありません。