「いじめ」撲滅には、子どもの啓発と…社会全体で取り組む意識が必要
今回注目したのは、宮城県仙台市の広報紙『仙台市政だより 2019年2月号』に掲載されていた、市長自らがさまざまな現場を訪問し、報告する連載記事「古今東西ぐんぐん行きます!」。今号は、仙台市いじめ防止「きずな」サミットを視察されたという報告でした。
仙台市いじめ防止「きずな」サミットは、各校から集まった小学5年生と中学2年生、総勢184人が参加し、学校での体験を話し合ったり、授業を受けたりして、「いじめ」問題を考えたというもの。サミットを通して吸収したことを校内で伝え、率先して学校生活に生かしていきたいとの声も上がったとのことで、頼もしい限りです。
私が、この記事に目をとめたのは、実は先日、ある「いじめ」を目撃したからでした。小学校の近くを通りかかった時、ひとりの男の子がたくさんのランドセルを持って、下校してきました。彼は重そうに顔をゆがめ、今にもランドセルを引きずりそうにしていましたが、周囲にいる、おそらく鞄を持たせているであろう友だちは「ほら、しっかり持てよ!」などと、笑いながら、その様子を見ていたのです。
私も小学生のころ、じゃんけんで負けた人が、次の電信柱まで、ランドセルを持つ…という遊びをした思い出があります。が、それにしても、この子は持たされる個数が多い…と心配になり、スマホをいじっている振りをしながら、しばらく様子を見ることにしました。すると、あることに気がつきました。重そうに持っている子に隠れて、みんなで次に出すじゃんけんを申し合わせていたのです。何回、じゃんけんをしても、荷物を持つのは彼ばかり。彼の顔は次第に真っ赤になり、泣いているようにも見えました。
実はこのとき、私のほかにも、心配して見ていたおばあさんがいました。そして、私に目配せをしてきたのです。私は、そのおばあさんの目配せに勇気を得て、子どもたちに声をかけることにしました。「ほら、自分のランドセルは自分で持たないと。おばさん、もらっちゃうよ」。子どもたちは、悪いことをしていると自覚していたのでしょう。すぐに「ほらー、おれのランドセル返せよ―」などと言いながら荷物を奪うと、気まずそうに散り散りに帰っていきました。
特に小さい子どもは、残酷なことを、ふざけ半分でしてしまうことがあります。だからこそ、この記事で市長が書かれていたように「子どもをいじめから守るためには、学校、家庭、地域全てがこのことを認識し、健やかに育む環境を実現することが重要」なのだと思います。
インチキのじゃんけんで、ひとりに集中的に荷物を持たせていた小学生たちは、あの「気まずさ」を心に刻んでくれたでしょうか。その後が気になっています。