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ごみ処理費、ひとり当たりいくら? 「見えないお金」を見える化する

「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事
あんびるえつこ

2019.03.04 広報むろらん 平成31年3月号 北海道室蘭市

 北海道室蘭市の広報紙『広報むろらん 平成31年3月号』に、「ごみ処理事業の全体的な見直しをすすめます」と題した特集記事が掲載されていました。財政の累積収支不足などが問題になっている室蘭市では、構造的な財政の見直しを計画。「ごみ処理にかかる費用」も抑えようと、市民に協力を求めています。

 ごみの処理に多額のお金がかかっていることを、普段、私たちはあまり意識しません。指定ごみ袋が導入されるとなると、きまって大騒ぎになるのは、そのためでしょう。ごみの処理は、当たり前ですが、無料ではなく、私たちが支払う税金で賄われているものです。それを理解しているはずなのに、ごみ処理費が増えていても、支払っているはずの私たちは特段、関心を示そうとしないのです。それは、多くの場合、源泉徴収される税金は、私たちにとって「見えないお金」になり、支出することに痛みを伴わないからにほかなりません。だからこそ、直接、支出を自覚する指定ごみ袋の導入となると、驚き、大騒ぎになるのです。

 『広報むろらん 平成31年3月号』は、こうした市民にとって「見えないお金」であるごみ処理に関する費用を、簡潔に報じています。まず、ごみの収集運搬や処理などにかかる費用は、毎年約6億円であること。これに対し、ごみ袋を交付するときに徴収する「ごみ処理手数料」で賄えるのが約2億円。差額の約4億円は、税金で賄われるのだといいます。

 とてもわかりやすいのですが、悲しいかな、億単位のお金ともなると、私たちは、なかなか実感することができません。そこで記事では、さらに税金による負担分を、市民ひとり当たりの金額としてあらわしてくれています。税金による負担分は、市民ひとり年間約5000円。なるほど。こうなると「見えないお金」は、より実感をもって理解できます。一般的な牛丼が、毎月約1杯、食べられるだけのお金。それが、ごみを処理するために、指定ごみ袋以外に市民一人ひとりが負担している費用というわけです。

 自分の手元から離れ、自治体に回収された「ごみ」は、私たちにとって「見えないもの」になり、自分から切り離された“みんなの問題”になりがちです。しかし、この記事のように総量だけでなく、「ひとり当たり」として提示されると、がぜん、“我がこと”として理解できるようになるものです。「見える化」はただ総量としての数字を提示するだけでなく、こうした“我がこと”としてとらえることができるような工夫によって、より効力を発するものになるのかもしれません。

 

ごみ処理事業の全体的な見直しをすすめます(1)

ごみ処理事業の全体的な見直しをすすめます(2)

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