知的障害のある方に生涯学習の場を
東京都中央区の広報紙『区のおしらせ 中央 平成31年3月21日号』に、「中央区かえで学級」学級生募集記事が掲載されていました。
「中央区かえで学級」は知的障害のある方を対象に、学校卒業後の生涯学習の場として区が開設しているもの。調理実習、華道・手芸・運動部にわかれての学習や、電車ハイク、宿泊研修会などの活動を通して、社会のなかで自立して生きていく力を身につけることを目的としています。
平成 29 年4月に文部科学大臣が「特別支援教育の生涯学習化に向けて」と題するメッセージを公表し、文部科学省生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」も設置され、障害者の生涯を通した多様な学習活動の充実のための総合的な取り組みを進めることになりました。今はまだ、障害のある方々への生涯学習の機会提供をしている市区町村は少数派です。「障害者の生涯学習活動に関する実態調査報告書」(平成 30 年3月、独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所)によると、学校卒業後の障害者が生涯学習活動として取り組める事業・プログラムを実施していると答えた市区町村は24.4%、実施していないとの回答は75.6%にのぼっています。
都道府県ならいざしらず、市区町村単位では、財政状況が厳しいなか、こうした取り組みを進めることは難しいのかもしれません。ただ、私が知的障害のある方々とともに活動したときに感じるのは、移動距離が少なく、より身近なところで学習の機会を得られることが大切であるということです。
2022年から18歳で成人になるということも、障害者の生涯学習が重要である要因となります。国民生活センターは「知的障害者であることをしったうえでクレジットカードをつくらせたり、年金や手当を狙ったりする。またサラ金の利用を促されて多重債務に陥ったりするケースがある。知的障害者の場合、障害の程度の軽い人が被害にあう傾向がみられる。被害を受けたという認識がない場合がある」といったことを指摘しています。2022年には、18歳で契約することができるようになるのですから、被害が拡大する可能性は十分あります。生涯学習の場で、常に変化する消費者被害の実態を学び続けることは、今後ますます重要になってくるにちがいありません。
限られた財源のなかで、より必要とする人が、より必要な学習機会を得られるように…。知的障害のある方を対象にした生涯学習の機会を考えるには、各自治体の想像力あふれる知恵が必要とされています。