一人ひとりが、周りの人の自殺を防ぐ「ゲートキーパー」に
宮崎県えびの市の広報紙『広報えびの 令和元年6月号』の巻頭特集は「守りたい あなたの命」。えびの市の自殺死亡率は全国に比べ高い水準だとして、市民一人ひとりが「ゲートキーパー」として見守ろうと呼び掛けていました。「ゲートキーパー」とは、、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて必要な支援につなげ、見守る人のことです。
自殺はなにも、えびの市だけの問題ではありません。日本における20代、30代の死因の1位は自殺です。そしてそれを裏付けるように、SNSには「リスカ」(リストカット)の写真や「死にたい」というつぶやきが溢れています。そこには、うまくいかない日常への苛立ちや焦り、自信の喪失、そして孤独が綴られています。リアルな生活の中で孤独を感じてSNSの中に仲間を求め、そして時にはその仲間からさえ傷つけられてしまう…。現代社会を生きるのは、こんなにも困難なものなのかと、SNSを覗くたびに、いつも考えさせられていました。
記事には、「大切な命を守る4つのこと」として、①気づき…周りの人の様子がいつもと違ってきたら要注意、②傾聴…一緒に悩み、考えることが孤立を防ぐ、③つなぎ…早めに精神科の医療機関や相談窓口を紹介する、④見守り…温かく見守ることも支援の一つ、と紹介されていました。詳しくは記事をご参照いただくとして、どれも具体的で、身近なところから取り組めるものばかりです。そして、「身近で悩んでいそうな人に声をかけることなど、あなたにできることから始めてみませんか」と提案されています。
いろいろなところで自己責任論がはびこる昨今、「誰も自殺に追い込まれることのない えびの市を目指して」というスローガンは、心を揺さぶられます。自殺は、健康問題や経済問題、人間関係の問題など、さまざまな悩みが複雑に絡み合って、心理的に追い込まれ正常な判断ができなくなった末に起きてしまうものだといいます。問題の根底には社会のあり方が大きく関わっているわけですから、社会の中で、つながり、支え合っていくことが大切なのかもしれません。
この記事で、私は「ゲートキーパー」という言葉を初めて知りました。知識として知ることはできましたが、かといって自分がすぐにそんな存在になれるか、正直、自信はありません。ただ社会の片隅で、どこかほっとする空気を発する存在ではありたいとは願っています。まずは一人ひとりができることを考えていくことが第一歩なのかな、と思います。