生の声に魅力が詰まっている…《特集1》倉敷で就農
「人生100年時代」「老後資金に2000万円」などと盛んに言われるようになった昨今、これまでのように会社に定年まで勤めれば人生安泰…というわけにはいかなくなってきたようです。そこで今、新たな生き方として就農が注目を集めています。農林水産省の「新規就農者調査」によると、平成29年の新規就農者は5万5,670人、このうち49歳以下は2万760人で、4年連続で2万人を超えています。
岡山県倉敷市『広報くらしき 2019年9月号』は、「倉敷で就農~未来を担う後継者」という特集を組み、倉敷の農業の魅力の紹介と、就農者の声を載せていました。
わが家の小さなベランダのプランターで野菜を育てていると、私も小学生の時の夢は農業だったなと思い出し、憧れたりもします。しかし実際に就農すると、どのような問題に直面するのか、都会育ちには想像することすら難しいものです。
記事にあった就農者の話で、まず驚いたのが「税の計算なども苦労しましたが、農業普及指導センターや農業大学校が開催している簿記の講習会などを活用した」という話です。そうか、農業も経営なのだから、数字の管理も必要なのか…と。
また「ブドウごとに値段が付くため、生産者の工夫や努力に見合った結果が伴ってくる点にやりがいを感じた」という話からは、値付けの知識すらなかったことに気付かされました。また「入院して農地の管理ができなくなった時は、地元農家の人や後継者クラブ、近所の人などに支えられ、乗り越えることができました」という話も。農家が扱うのは“生き物”ですから、病気で手を休めたい時の対応も重要です。
憧れから一歩進み、実現へと歩み出すには、こうした生の声による気づきが必要なのだと改めて感じました。
日本の農業の行方は、私たち日本に住む者の生活に直結しています。「平成30年度 ⾷料・農業・農村⽩書」によると、2017年度の⾷料⾃給率は、供給熱量ベースで38%。2018年における販売農家の農業従事者の平均年齢は67歳。先行きが危ぶまれる農業の新たな担い手として、新規就農者が根付いていくかどうかという問題は、私たちみんなの問題でもあります。記事にあった倉敷の就農者の話は心強く、頼もしく…。そして個人的には、少しうらやましくもありました。