地域をつなぐヒントは、雪国にあり!?
2018年の1月は、珍しく東京にも大雪が降りました。用事があった私は、歩道に降り積もる雪の上を転ばないように、よちよちアヒルのように歩いていました。すると、近所の八百屋さんの前のあたりから、いきなり雪かきされた、きれいな歩道が出現したのです。ほかのエリアの雪かきとは一線を画す、完璧に雪が排除された歩道に驚いていると、ショベルを片手に八百屋の店主が笑って立っていました。「北陸育ちだから。こんなの序の口だよ」。雪かきは技術だ…と思い知った瞬間でした。
福井県鯖江市の広報紙『広報さばえ 令和元年12月号 通常版』の巻頭特集は「雪に備える-雪に強いまちづくりを-」。この特集には、雪の多いエリアならではのノウハウが詰まっていて、あの八百屋の店主の秘訣が、少し垣間見られたような気がしました。
印象的だったのは、市民と行政が協働して豪雪を乗り越える様子です。例えば、除雪作業の後、玄関や車庫前の雪の手直しは各家庭で行ってほしいこと、また空き地や田畑など雪捨て場の確保に協力も市民に呼び掛けられています。みんな一緒になって、雪の処理に取り組んでいる様子が伝わってきます。また「みどりのスコップひとかき運動」というのもあるようです。これは主要なバス停、駅前交差点などで、待ち時間に、設置してあるスコップを使って除雪するというもの。市民がちょっとした時間を提供することで、街を守っているのですね。
協働は、市民と行政だけでなく、市民間でも行われているようです。雪下ろしは、2人以上で行うこと。道路に面している家の屋根の雪下ろしと排雪は、町内会で申し合わせて同じ日時に…など、ご近所で声を掛け合って、雪に対峙している様子がうかがえます。
東京には、大雪がめったに降らない分、このように協働する機会も少ないのだと、気付かされました。東京は一人世帯が多く、またこれから急激な高齢化を迎えると言われています。地域の力が必要になることは確かであるにもかかわらず、雪国にあるような協働の経験に乏しく、各人が孤立しています。みんなの参加意識を高め、協働して行くために必要なアプローチはどういうものなのか。雪は降らなくても、例えば「みどりのスコップひとかき運動」にならって、通学時間に旗を振って子どもたちと一緒に横断してあげる「みどりの旗ふり運動」というのも考えられるかもしれません。雪国から学ぶことはたくさんありそうです。