望ましい広報紙の配布方法とは-全戸配布の限界とデジタル活用の可能性
先日、「新聞購読世帯減で届かぬ広報誌 郵送切り替えもコスト増 悩む自治体」と題した記事が配信されました(毎日新聞2022年3月27日)。
新生活を始める人も多いこの季節は、住んでいる地域の情報を分かりやすく伝えてくれる広報紙誌(以下、広報紙)の需要が高まる時期でもあります。
広報紙の発行には、印刷や配布まで含めると少なくない手間と費用が掛かりますが、多くの自治体は全ての地域住民に届けるための工夫を凝らしています。その配布方法は主に、
(1)自治会等による配布
(2)販売店等による新聞折込
(3)事業者によるポスティング
の3つですが、
(1)自治会構成員の高齢化と加入者の減少
(2)新聞購読世帯の減少
(3)地域によっては対応可能な事業者が不在
といった課題が複合的に生じており、全世帯への配布は年々難しくなっています。
これを補うために、希望者には個別に郵送したり、郵便局やコンビニエンスストアに配架している自治体もありますが、前者のコスト負担は大きく、後者では対象施設の利用者でないと気付くことができず、すぐになくなってしまうため入手できないという声を聞くこともあります。
各自治体が試行錯誤を重ねる中、京都府舞鶴市の『広報まいづる 2022年3月号 Vol.1033』掲載の「4月号から広報まいづるを全戸配布に変更」では、新聞折込から全戸配布(ポスティング)への変更と、郵送と配架の廃止を知らせています。
また、東京都目黒区でも、『めぐろ区報 令和4年3月15日号』掲載の「4月からめぐろ区報を区内全戸にお届けします」に、新聞折込から全戸配布への変更を周知しています。
一方、茨城県朝来市では、同じく新聞折込で配布していたものの、新聞購読世帯の大幅な減少を受けて、試験的に市内1万超の全世帯への郵送を実施しました。
また、静岡県浜松市では全戸配布を取りやめ、自治会加入世帯に限り配布を続けるとともに、公共施設やウェブで閲覧する形に切り替える方針を示しており、『広報はままつ』専用のウェブサイトとスマートフォンアプリを提供しています。
https://city-hamamatsu.kohoplus.jp/
広報紙は自治体の施策を地域住民に伝える大切な手段ですが、業務効率化や感染症対策、SDGsの視点などから、紙とデジタルの併用や段階的な切り替えが進みつつあります。デジタル化のメリットには、コスト削減だけでなく、障害者や日本語を読むのが難しい方々への「情報保障」もあります。
限られたリソースの中で、どのようにして「誰一人取り残さない」広報を実現するのか。広報紙の配布を通じて、広報そのもののあり方が問われています。
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