Win-Winの連携が垣間見える 中学生の課題解決型職場体験
新潟県佐渡市の広報紙『市報さど 平成30年12月号』に掲載されていた「中学生 課題解決型職場体験に挑戦!」の記事を、楽しく読ませていただきました。
中学生の職場体験は、近年、ほとんどの中学校で実施されています。国立教育政策研究所の「平成28年度職場体験・インターンシップ実施状況等調査」によると公立中学校における職場体験の実施状況は、なんと98.1%。多くの学校が2~3日の職場体験を実施しているという結果になっています。しかし2年前、下の娘が中学生で職場体験をした後に、お客様扱いだったり、既定の時間より短時間で終わってしまったり、お菓子をごちそうになって談笑していたり…という職場があったと話していたことを思い出しました。中学生が学校を飛び出して、どのような「体験」をするかは、ばらつきがあるのが現状のようです。
こうした現状に、『市報さど 平成30年12月号』の記事は大きなヒントをくれそうです。佐渡市の解決型職場体験は、さまざまな事業所から出された課題を解決しながら職場体験するというもの。掲載されていた課題は「ホテル業…旅館で佐渡のよさを知ってもらう方法を考えよう」「図書館…中学生に本を読んでもらうには」「福祉施設…レクリエーションを企画し、実践してみよう」といった、いずれも中学生の“知恵”を求めるもの。体験後に生徒が「施設の方の喜ぶ遊びを3つ作ることができて、とてもうれしかった」と感じる一方で、事業者側も「課題に応えた体操はすばらしいものが提案され、現在もお年寄りと一緒に体操をしている」との声が寄せられていて、「事業所にとっても生徒にとっても、とても意味のある活動」になっているといいます。
先生方が地域の会社や施設などをまわって受け入れをお願いしなくてはいけない、中学生のやる気のない態度にお叱りを受ける…など職場体験にまつわる困難をよく耳にします。佐渡市のように事業所側に課題を出していただき、生徒は課題の解決策を考え実行する中で学びを得る…といったWin-Winを目指した連携は、こうした困難を乗り越え、実りある「職場体験」にするためのヒントになりそうです。
生産年齢人口の減少、グローバル化、人工知能をはじめとする技術革新などにより、社会構造や雇用環境が大きく変化を遂げようとしている昨今。子どもたちが未来社会を切り拓ひらく資質・能力を培うには、地域社会の力が不可欠。それも、子どもたちをお客様のように扱わない、佐渡市のような試みが必要とされているのではないかと思います。