地元の人に参加を募る「モニターツアー」の意義と
高知県仁淀川町の広報紙『広報によど川 2019年2月号』に「天界集落トレッキング・モニターツアー開催!」の記事が掲載されていました。募集されているのは3コースで、所要時間はそれぞれ約2時間。募集文面に「町内外の方に知ってもらうため」と書かれていることから、想定している参加者はおそらくトレッキングする場所を生活圏に必要とする地元の方々でしょう。モニターツアーを実施して、参加者に感想を聞き、内容を充実させるというのが目的のようです。
とはいえ、参加費は無料ではありません。いりもち代、保険代、ガイド料で、各回ひとり1,000円となっています。いやいや、地元を歩くだけなのに?と思うなかれ。私が仁淀川町に住んでいたら、きっと参加したと思います。
というのも、先日、こんなことがあったからです。近所の喫茶店で仕事をしていたとき、香港からこられたというグループに話しかけられました。「観光サイトに載っていない日本らしいところ」を見たいというのです。そこで頭を抱えてしまいました。この地に住んで20余年。いろいろ知っているつもりでしたが、「日本らしい」ってなんだろう…と考え込んでしまったのです。最初に思いつくのは神社仏閣ですが、それらは観光サイトの得意なところでしょう。それ以外で…さて…。
ひとりの日本人として、はるばる来日してくれた外国の方々に、「日本らしい」よいところを案内してあげたいという気持ちは山々です。でも、近所の風景は私にとってあまりにも当たり前で、何も考えずに通り過ぎるものだったのです。
しばらく考え込み、ようやく思いついたのは、この地に引っ越してきたばかりのときに見つけた、路地裏の井戸でした。近所とはいえ、今ではわざわざ行くことも、思い出すこともないところです。地元民としてではなく、新鮮な目で見ていたころの自分に助けられた思いでした。
というわけで、仁淀川町の地元の人に向けた「モニターツアー」は、改めて「参加者」としてお金を払い、ツアーガイドの話を聴き、新鮮な目で近所を歩く…という点で、とても意味深いものではないかと思ったのです。
日本政府観光局によると、訪日外国人観光客の数は、2017年は約 28,69万人と、観光立国推進基本法が成立した2006年に比べ約4倍に増加しています。東京オリンピックに向けて、今後さらに増えていくことでしょう。そんな来訪者の視点に立って、みんながそれぞれの地元を案内できたら、それこそ日本の「お・も・て・な・し」ではないかと思うのです。