モノを大切にする心を…子どもたちに柴田メグミさんが手作りノート寄贈
「ノートだけは贅沢に使いなさい」。私が子どものころ、教師だった父からよく言われていた言葉です。戦前生まれで、いろいろなモノを「まだ使うの?」と思うくらい大切に使い、私たちにも常日ごろ、質素倹約を謳っていた父から唯一許された“贅沢”でした。数学の教師だったので、いろいろな方法で試行錯誤していくことが重要だと考え、その過程をノートに存分に記す“贅沢”を許そうと思ったのでしょう。
そんな父の真意に思いが至ったのは、おとなになってからです。小学生の私は、その“贅沢”を満喫。かわいい表紙のノートを買っては、数ページ使っただけで別のノートに乗り換えてしまうということもよくあったように思います。もう40年以上前でさえ、そんな状況です。今やいくらノートを使おうと、それをもって“贅沢”と、表現することすらなくなったような気がします。なにしろ100円ショップにいけば、素敵なノートが安価で選び放題なのですから。
そんなことを考えたのは、熊本県あさぎり町の広報紙『広報あさぎり』に「柴田メグミさんが手作りノート寄贈」という記事を目にしたからです。柴田さんは33年前に「手作りノート」の寄贈を始め、以来毎年、町内の小中学校に手作りノートを贈り続けていると言います。今年、寄贈された手作りノートはなんと約1,300冊にもなります。
毎年のことで、町の人たちはどのような手作りノートなのか、きっとわかっているのでしょう。記事には、これ以上、ノートについての詳しい記述はありませんでした。ただ「物の大切さを伝えるため」と書かれていたので、おそらく広告チラシをリサイクルしたものではないかと推察します。そんな柴田さんの手作りノートを受け取った児童は、どう感じるのでしょう。
今どきの子どもがどのように受け止めるのかが気になって、ちょっと大きくなりすぎてしまいましたが、高校3年生の娘に尋ねたところ、意外な答えが返ってきました。「すごいな、と思う。広告チラシにこんな使い方があるのかって。それから一つひとつ作ってくれたのだから、好きな言葉を書き留めておくノートとか、長く保存できるようなことに使うと思う」。
大量生産大量消費の時代に生まれ育った今どきの子どもたちにも、柴田さんの手作りノートは、しっかりと受け止められるようで、安心しました。今後も体力の続く限り続けていきたいと話す柴田さん。柴田さんが大切にしている価値観は、これからも町の多くの子どもたちに伝えられ、そして根づいていくことでしょう。