ご存じですか? 「行政相談委員」
「お役所仕事」という言葉があります。形式主義で、ちょっと気が利かない役所の仕事振りを非難して使う言葉ですが、実際に利用する当事者でなければ気付かないことも多々あるもの。「お役所仕事」と非難するよりも、お役所の仕事をみんなの知恵でよりよいものにしていくことを考えていきたいものです。
愛知県小牧市の広報紙『広報こまき 令和元年10月15日号』には、市が行政相談を受付けていることが告知されていました。行政相談は、総務省が、国や特殊法人などが行っている仕事について国民から苦情や意見・要望を受けつけるというもの。対応するのは行政相談委員法(昭和41年法律第99号)に基づいて、総務大臣から委嘱された民間有識者の行政相談委員で、全国に約5,000人が配置されています。行政相談委員は、無報酬のボランティアとして、さまざまな行政分野に関する苦情・相談を受け付け、相談者に助言を行ったり、苦情の対象となった関係行政機関にその内容を通知し改善を働きかけたりしています。
平成30年5月に総務省が発表した『行政相談委員意見を反映した行政運営の主な改善事例』に、行政相談によって改善された事例が掲載されていました。例えば、特別養子縁組の成立のために子を監護している期間も、育児休業給付を受けられるようにしてほしいという意見に対し、育児休業法を改正し、特別養子縁組成立前の子の監護中も育児休業給付の対象とされたという事例。また、視覚障害の方からの「日本年金機構から送られてくる年金額改定通知書の文字が読めずに困っている」という意見に対しては、音声コードを印刷して発送することができるようシステムの改修などの見直しを行うことになったという事例などが紹介されています。
いずれも「なるほど、言われてみれば…」ということばかりです。市民にとって使いやすいシステムにしていくには、当事者である市民の声がとても大切だということが分かります。
平成29年度の行政相談委員意見の受付件数は、173件。内容を精査し、改善の必要があるものは、関係行政機関に対して改善するよう通知したり、あっせんしたりするなどしていくそうです。よりよい未来のために、私たちも当事者として、アンテナを張りめぐらしておきたいものです。