電子化した回覧板、新たな段階へ
「歴史は人生の師です。自分が過去に体験したことは、将来のための学校だったのです」とは、ヤコブ・アルベリオーネの言葉です。今日は2017年3月11日。この6年間、私たちは背負いきれないほどの悲しみの中から、それでも多くを学びました。福島県楢葉町の『広報ならは』から伝わる、立ち上がろう、そして経験をもとに前よりよい故郷をつくろうという姿に、200km以上離れた東京に住む私も多くのことを学ばせていただいています。
その『広報ならは』の 平成29年 3月号(第566号)は、「新タブレットは本体0円 通信料【格安】1,946(税込)円/月」という一見、どこかの通信会社の広告のような見出しで始まっていました。
楢葉町は平成25年度から「楢葉町きずな再生電子回覧板事業」として、町民のタブレット端末に、町からの情報をリアルタイムで配信していました。それが国の補助が終了することなどに伴い、廃止されることになったのです。しかし継続を望む町民の声が多く、4月から新たなタブレット端末を用意し、端末は無料、毎月の通信料等は利用者負担で継続する…ということになったというわけです。
そういえば、実家の母が嘆いていました。すっかり高齢化した住宅街にある我が家は、ご近所が空き家になったり、入院やデイサービスの利用などで訪ねて行っても会えなかったり…で、回覧板を回すにも、ひと苦労になったと。未だ家に戻れない人が多い楢葉町のこと。母の愚痴などよりも、もっともっと切実なはずです。そこで考えられたのが、件の「電子回覧板」だったのでしょう。
あれから6年が経ち、さまざまな補助金が打ち切られるという話を耳にします。そのたびに、心が痛みます。こうした事態を受け、楢葉町も業者も、端末の無料化、通信料も安く抑えるなど、努力されたのだと思います。さらにはそれまでの3G回線から4G回線になることで様々なことが可能になるため、講習会を開催するという試みもされるといいます。
補助金のないところで、「電子回覧板」がどのくらい必要とされるのか、そこからまたどのような可能性が見つけられるのか。楢葉町の取り組みは、超高齢化社会に向かう私たちにとっても、いわば先進的な事例になるに違いありません。
ただ、そうした期待の一方で、この上、師として先んじていただくのは心苦しくもあるのです…。