顔の見える広報
誰が書いたのか分からなない文章よりは、誰が書いたのか明らかな文章の方が力を持ちます。無署名の記事よりは、署名ありの記事の方が読者に強い印象を残すのです。
そうは言っても、自治体の広報紙の記事の大半は無署名のものです。広報担当者による編集後記が設けられているところもありますが、それも例外的と言って良いでしょう。
今回取り上げる香川県土庄町の広報紙には、「はい。こちら土庄町役場○○課です。」という欄が設けられています。ここでは、担当者が登場して、語りかけるように施策の説明などがなされています。この3月号では、税務課の笹山課長が登場して、確定申告への協力を求める記事を書かれています。
ただ確定申告を求められても、単に「税金を払え」ということだろうと思われるのが関の山ですが、きちんと担当者が前面に登場して、その意義が説かれれば、その印象も随分と変わります。
「自治体の顔」という意味では、首長が真っ先に思い浮かびますし、実際に首長は広報紙にも頻繁に登場する存在です。首長の署名の入った記事も数多く見かけます。ですが、この土庄町のように、担当者の署名入りで、なおかつ実際の紙面では顔写真入りの記事というのはそれほど見かけません。土庄町の記事からは責任をもって仕事に取り組む職員の矜持が見て取れます。
自治体の広報紙ということで、その記事の主語は基本的には当該自治体ということになるのは仕方がないのかもしれませんが、一人一人の職員が責任をもって仕事に取組み、市民との信頼関係を醸成するためにも、この土庄町のように署名入りの記事を作成することがもっと検討されて良いと考えます。