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3.11 震災文庫を読む 32

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宮城県仙台市 クリエイティブ・コモンズ

東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。

■少し黙って欲しいときに読む本
吉野作造記念館主任研究員 小嶋 翔

◇「沈黙の作法」
山折哲雄・柳美里/著
河出書房新社 刊

◇「飼う人」
柳美里/著
文藝春秋 刊

「コロナ禍(か)」の昨今、妙な既視感で疲労を覚えたときに読むと、少し心が澄む気がします。既視感とはたぶん、震災の後にも見た、あの無 雑作(むぞうさ)な言葉の氾濫。TV(テレビ)とかインターネットとか。
震災後、作家・柳(ゆう)美里(みり)は南相馬でのラジオ番組「ふたりとひとり」で、津波被害に遭った人を2人ずつ招きます。話すのは体験を共有する「ふたり」(夫婦、友人など)。柳は自分がどこまでも当事者でないことを突きつけられ、ただ聞き手として沈黙することを自分に科します。しかし、それ以上に沈黙を強いられたままの震災の死者。「死者の沈黙より軽い言葉を発してはならない」と、沈黙の中でじっと言葉を探し続ける柳…。
『飼う人』は、そんな柳による震災後の短編作品集。各編の主人公は、芋虫やウーパールーパーなど、ほとんど動かない生物の飼育に取り憑(つ)かれます。動かぬ者をじっと見つめる沈黙が、日々の暮らしの中で傷つくことに慣れてしまった自分を露(あら)わにし、そこから乾いた日常が裂けていきます。その先に救いがあるのかは、分かりませんが。
反射的な言葉が溢(あふ)れる時代には、沈黙のための道具が必要な気がします。芋虫が苦手なら、『沈黙の作法』からお好きなものを見つけてみましょう。京都・広隆寺の半跏思惟像(はんかしゆいぞう)とか、ワキ方能楽師の背中とか。収束したら見に行きたいものです。

▽紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます

問合せ:市民図書館
【電話】261・1585

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