くらし 那珂川市に恩返しを 肩を寄り合って読み合えるような絵本との出会いを(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県那珂川市
- 広報紙名 : 広報なかがわ 2025年11月号
●なかがわのスター
・塩川 宏樹(しおかわ ひろき)
和歌山県で保育士として勤務し、平成26年からふれあいこども館(8年)・中央保育所(1年)カタヨリ絵本店(六本松)・ミリカフェの経営。市内に限らず読み聞かせ活動を行っている。
◆誇らしさとプレッシャーの葛藤 市役所の枠を飛び出して
関西で保育士として働いていた塩川さん。那珂川市(当時は町)に来たきっかけは、インターネットで那珂川町が子育て支援施設を住民参画主体で建てることを知り、「今どき住民参画で建てているところがあまり無く、面白いことをしているところがある!」と感動したことだ。
ちなみに「しかもあんな大都会にできるんだ!」と最寄り駅の博多南駅を博多駅南と間違えたことも明かしてくれた。
那珂川市役所採用後、子育て支援センターに配属。「前職の保育園でやってきた遊び歌・絵本・シアターなどを活かせて、とても仕事がしやすかったです。」と当時を振り返る。
ふれあいこども館に配属後、「0~18歳までの対象の施設は珍しく、そして住民参画で建てられた想いのこもった建物なので、多くの市民に知ってもらい、居心地がいいと感じてもらわないと。」と気合十分。出前講座や相談事業・アウトリーチにとても力を入れた。しかし、それぞれが難しく、「本当にこれでいいのか」という葛藤もあった。
そんな時、上司のHさんにいただいた「LIKEじゃだめ、LOVEじゃなきゃ」という言葉に奮起。
「ふれあいこども館を軌道に乗せよう!」
スタッフみんなが同じ方向、熱量で助け合い、イベントでは、市職員も積極的に参加してくれて、とても仕事がしやすい環境だった。
「今振り返ると、ふれあいこども館での仕事を任せてもらった『誇らしさ』の方が強かったですね。」
数年が経ち、少しずつ塩川さんの心境に変化が。
「もっと自分なりの支援をより多くの人へ届けたい。」「市役所という枠を飛び出し、民間でしかできないことにチャレンジしてみたい。」という思いが少しずつ強くなっていった。
◆人に恵まれていた9年間 自分なりの支援へ向けて
「転職(独立)しようと決意した理由は、自分のステップアップのためです。相談者に自分が本当に寄り添えているのかと考えた結果、民間の立場から今まで出会わなかった人たちにたくさん出会うことで、さらに視野が広がっていくと思いました。」
「人事担当者に『退職をもう一回考え直してほしい』と言われた時、自分自身がとても必要とされていると感じ、とても嬉しかったのと同時に一緒に仕事した仲間がいなかったら、今の自分はいないと実感しました。すごく寂しい気持ちと、途中で辞めることが申し訳ない気持ちでいっぱいでした…。」
しかし、塩川さんの飽くなき向上心への決意は変わらなかった。
「振り返ると、市役所で9年間やってこれたのは、那珂川市への熱い想いを持っている職員の皆さんと時にはぶつかり合い、切磋琢磨しながらやってこれたからだ。」と感慨深そうに塩川さんは語る。
市役所で培ったスキルを活かして、自分のやりたかったことを民間で実現できていは、那珂川市役所職員での土台があったからだ。
「那珂川市と私、それぞれの役割で少しでも交わっていき、出来る限り那珂川市に関わっていきたいです。市役所と民間の両面を知っているからこそ、自分なりの支援が出来ている今に、とても幸せを感じています。」
「市役所を退職しても変わらず気にかけてくださるNさんやKさんの存在も励みになりました。」
◆たくさんの人との出会い 何もかもが初めて
開業に向けた事前準備はなく、那珂川市役所職員最後の日まで仕事を全力投球で全うした塩川さん。退職の次の日からさっそく開業準備に取り掛かった。
「最初に株式会社フクイトワークスを設立しましたが、なかなか資金融資が受けられず、那珂川市商工会へ相談に行きました。その時、創業計画書を見た担当者に『塩川さんがやろうとしていることに凄い共感できるし、社会貢献事業ですね』と言っていただき、商工会の人に背中を押してもらいました。その後、銀行で融資を受けることができ、今でもその人のことはとても記憶に残っています。」と塩川さんは語る。
次に絵本の仕入れ先を決め、那珂川市内で絵本店を出店できる場所を探しながら、妻の光み香かさんが営むイトヲカシ(市内のパン屋さん)の閉店後、ショーケースに絵本を並べ販売営業。しかし市内で出店場所が見つからず、福岡市中央区の六本松にある住宅街に令和4年10月、『カタヨリ絵本店』を開業した。
「全然知らないエリア、何もかもが初めて。そんな時、絵本店の内装作業を市役所先輩職員のNさんやKさんが手伝いに来てくれたことがとても嬉しかったです。」と当時を振り返る。
