長年過ごした家が、母の心のよりどころやったんじゃないかな。
その気持ちを尊重できて、本当によかった。
《最期のときをどう生きたいですか――》
あなたが大切にしていることや最期に向けての考えを、元気なうちに信頼できる人と話し合うことを「人生会議」と言います。あなたの望む医療や介護について、前もって考えて、周囲の人と話し合い、共有する取り組みのことです。
もしもに備えて自分の想いを明確にすることは、周囲の人の負担を減らすだけでなく、大切にしたい想いにも気付くきっかけになります。最期のときまで自分らしく生きるために、自分の想いを伝えてみませんか。
〈石川さん夫妻〉
夫:金也さん
妻:理恵子さん
金也さん:入院していた母に、これからどうしたいかと聞くと、「家に帰りたいけど、家族に迷惑をかけたくない」との返事。家に帰ってきたとき、ベッドの上から日常の風景を見れて、うれしそうでした。自室の天井が視界に入ることも幸せやったんじゃないかな。
理恵子さん:病院でのお義母(かあ)さんは、血の気が引いたように見えてね。家に帰ってきてからは、「自分は幸せやわ」と元気よく言っていました。家の力は本当に大きいなぁと思いましたね。とは言え、私たちは介護は初体験。はじめは、水を飲ませることすら怖かったです。そんなとき、専門職の人たちが大きな心のよりどころでした。今思うと、介護をしなかったら、お義母さんの肌に触れる機会もなかったかも。いろんな介護サービスを受けて、自宅で看取(みと)れたことは、自分の自信にもなった気がします。
石川米子さん 今年8月に97歳で逝去
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