高齢化が進む社会の中で、認知症患者の割合は年々増加しています。令和4年に行われた国の調査によると、65歳以上の3人に1人が認知機能に関わる症状があることがわかりました。
今回は、認知症の当事者とそれを支える家族や関係者を紹介し、自分や家族が「認知症になったら」という問いについて考えます。
▽いなべ市もの忘れ初期集中支援チーム 認知症サポート医
山脇崇さん
〇最も多いアルツハイマー型認知症
認知症は種類によって原因や症状が異なります。全体の約7割を占めるアルツハイマー型は、初期にもの忘れが目立ち、日付がわからなくなるなどの傾向があります。
加えて、数分から数時間までの間隔で同じ話を繰り返すことも特徴の一つです。また、意欲が急に低下したり、うつっぽくなったり、きれい好きだった人が掃除をしなくなったりなど、以前と違う変化があれば注意が必要です。
〇「治す」のではなく、将来に「備える」ために
私は、認知症は「完治を目指す」というよりも「早めに気づいて将来に備える」ことが肝心だと考えています。現在の医療では、残念ながら認知症を確実に治せる薬はありません。しかし、症状が軽いうちにわかれば、介護の段取りや生活費の見通し、周囲に助けを求めるタイミングなどを家族で検討する余裕が生まれます。
その上で強調したいのは、「家族がまず自分自身を守る」ことが、結果的に本人のためにもなるという視点です。認知症が進むと同じ話を繰り返したり、予測しづらい行動が増え、家族が疲弊しやすくなります。そんなときこそ、デイサービスやショートステイなどを活用し、適度に休む時間を確保することが欠かせません。家族が限界まで我慢を続ければ、いずれ気持ちの余裕を失い、穏やかな対応ができなくなってしまいます。家族が元気でいるからこそ、ご本人にも優しく接し続けられる―。この両立が、認知症ケアで何より大切なのです。
【認知症の種類】
〇アルツハイマー型
もの忘れ(特に日付の混乱)が初期から目立ち、進行すると意欲低下や性格変化も見られます。
〇脳血管性
脳梗塞や脳出血によるもので、脳のどこにダメージを受けたかで症状が変わります。
〇レビー小体型
幻視(存在しない人や物が見える)や症状の波が大きく、手足の震えなどパーキンソン病のような症状も伴いがちです。
〇前頭側頭型
性格や行動が大きく変化し、怒りっぽくなるなど衝動性が強まるのが特徴です。
【脳への刺激が予防に】
認知症予防には、まず孤立を避けることが大切。近所の人や友人と会話したり、外へ出て見る景色を変えたりなど、人との関わりを意識的に増やして脳に刺激を与えましょう。
テレビのような一方通行のメディアだけでなく、双方向のコミュニケーションを心がけると効果的です。退職後もシルバー人材センターなどで働く機会を持つのも良い方法ですし、熱中できる趣味を見つけるのもおすすめです。インプットとアウトプットの両方をバランス良く続けることで、認知機能の衰えを緩やかにする手助けになります。
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