▼認知症本人とその家族の声
▽千鶴子さん
〇認知症になっても、私のまま
「認知症になっても、何も変わらんよ」と穏やかに笑う千鶴子さん。彼女は軽度認知障害(MCI)を経てアルツハイマー型認知症と診断されましたが、家族や周囲の支えを得て毎日を楽しんでいます。
「新しいことは、すぐ忘れちゃう」と言う一方、長年の経験で身につけたミシンの腕を生かし、ひ孫の持ち物に名前を縫い付けたり、掃除や育児を手伝ったりと大活躍です。
診断時は少なからずショックを受けたものの、「何より家族が近くにおるで」と心強さを語り、「忘れることに落ち込んでも仕方ない。今できることをするだけ」と前向きに日々を過ごしています。
▽落合夏代さん 千鶴子さんの娘
〇知識があれば、認知症への向き合い方が変わる
母のもの忘れが増え出したころから「もしや」と思う部分はあったので、早い段階から病院で受診していました。そのため、いざ認知症と告げられた時も、大きな驚きはありませんでした。むしろ診断がついたことで、具体的な対応を考えるきっかけになりました。
母の生活で大切にしているのは、本人のペースを尊重することです。慣れ親しんだやり方や道具をそのまま使うことで、混乱せずに生活できています。リモコンの場所を決めておいたり、新しいものへの買い替えを控えたり、伝えたいことはメモに残したり、これまでの生活を続けられる環境づくりを意識していますね。
母はお風呂上がりのひ孫の着替えを手伝ったり、ひ孫と遊ぶ時間を楽しんだりしています。認知症になったからといって、全てができなくなるわけではありません。できることを見つけて支えることが大切だと感じています。
〇周りに助けを求めることが大切
最初は、認知症なのか、うつ状態なのか迷ったり、整形外科で処方された薬が他の痛み止めや眠剤と重なって、かえって精神的に不安定になったりと、試行錯誤の連続でした。母もつらかったようで、私に対して攻撃的になることが増えた時期もありました。ところが、適切な診断を受け、薬の処方を見直したことで、少しずつ落ち着きを取り戻し、「受診を先延ばしにしなくてよかった」と心から思いました。
さらに、主治医から「まだ大丈夫ですよ」と言われるだけで、母はもちろん、私も気が楽になりました。検査や問診を丁寧に行い、状態を分かりやすく示してもらうことで「どう支えればいいのか」がつかめたように思います。
認知症になっても、家族だけで抱えこむ必要はありません。周囲の支援や専門機関を活用すれば、「一人ではない」という安心感が得られ、本人も家族も次の一歩を踏み出せるようになると思います。
《本人、家族、そして仲間たちが一緒に考えた『伴走支援』》
本人や家族の相談先や居場所づくりについて、実際の介護体験を踏まえた話を聞くことができます。
講師:多田美佳さん(一般社団法人はるそら代表理事)
日時:3月2日(日)13:30~15:00(受け付け13:00~)
場所:大安公民館大ホール
参加費:無料
申込方法:電話、申込フォーム(本誌5ページにQRコードを掲載しています)
申込期限:2月20日(木)
申込・問合せ:NPO法人快生教学会
【電話】37-7062
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