▼認知症本人と家族が笑顔で過ごすためのヒント
▽社会福祉法人モモ 特別養護老人ホームもも大安
認知症看護認定看護師 島村真美さん
〇背景にある思いをくみ取る
私は、デイサービス施設の運営を通じて、利用者やその家族に向けた認知症ケアを行っています。怒りっぽくなったり、被害妄想が出たりすると、「認知症だからしょうがない」と流されがちですが、実際にはちゃんと理由があるんです。
たとえば「家に帰りたい」と訴える人がいたとして、なぜ帰りたいのか話を聞くと、以前トイレで失敗してしまい、迷惑はかけられないと思っていたり、家族のことを心配していたりと、さまざまな理由があります。だから、まずは「どうしたの?」「なぜ家に帰りたいのですか?」と聞くことが大事。その上で気持ちに寄り添う言葉をかけると、本人は安心してくれますよ。
〇できることを取り上げない
認知症になると、「もう危ないからやめて」と、全部やめさせてしまう家族も多いです。でも、何か役割があるほうが心も体も元気になるんですよ。
私たちの施設では、全部は大変だから3枚だけ皿洗いをお願いするとか、洗濯物を1枚だけ畳んでもらうとか、その人が無理なくできるよう心がけています。家庭でも、時間や余裕はないとは思いますが、手が空いたら「ここだけお願い」と細かく区切って頼んでみてください。「できた」が増えると、笑顔で過ごしてもらえるようになりますよ。
▽いなべ総合病院 いなべ看護ステーションのぞみ
認知症看護認定看護師 川杉洋子さん
〇認知症の不安に寄り添う
私は普段、ケアマネジャーや医師などの多職種と連携し、訪問看護を通じて認知症の人や家族を支援しています。
認知症の人は、何度も同じ質問をしてしまうことが多いですが、これは単にもの忘れが激しいからだけではありません。実は覚えられないことが一番不安で、家族に迷惑をかけたくないという思いが強かったりするんですよね。だからこそ家族は「またその話?」と否定するのではなく、「そうなんだね、一緒に探してみようか」などとやわらかく受け止めてもらえると、本人も安心すると思います。なぜその症状がでるのか、理由が分かると接しやすくなると思います。
〇楽しく暮らせる目標を
私は、「認知症になっても楽しく笑顔で暮らす」ことを目標にしています。そのためには、まず本人を支える家族が、笑顔で暮らしていくことが大切。介護を家族だけで抱え込まずに、誰かにサポートしてもらうことが必要です。
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すると、いろんなサービスを紹介してくれます。専門家や地域のサポートを積極的に利用してください。
《ポイント》
1.まずはよく話を聞く
2.認知症の人のできる力を奪わない
3.笑顔で視線を合わせて認知症の人の思いに共感する
将来、誰でもなる可能性のある認知症。家族だけでどうにかしようとせずに、周囲からの支援を受けることが何より大切です。本人も家族も笑顔で暮らしていくためにも、認知症への正しい向き合い方について考えてみませんか。
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