市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎医師
【質問】良い睡眠のために私たちができることは?
【回答】良い睡眠と良い覚醒を意識して生活することです。
■「眠り」に関する体のしくみ
人が眠りに入っている時には、体の奥の深部体温が下がっています。この深部体温が下がるには、「皮膚表面を温めて血流が増える→皮膚から熱が逃げる(熱放散と呼ぶ)→皮膚温度が低下する→深部体温から皮膚表面に熱が移動する→深部体温が下がる」という流れが重要です。入浴後に眠くなるのは、上記のような変化が体の中で起きているからなのです。また、赤ちゃんや子どもが眠たくなる時に、顔があからんだり手足がポカポカしたりしていませんか?あれは、皮膚の血流が良くなって、まさにこれから深部体温が下がろうとしている様子を見ているのです。
■睡眠を妨げるものと、その対処法
冷え性の人で靴下を履いたまま眠る人がいるかもしれませんが、あれは皮膚からの熱放散を妨げるため、熟眠を妨げます。靴下や湯たんぽなどは布団に入ったら外すようにしましょう。また、脳が興奮していると深部体温が下がらないため、ゲームやスマートフォンなどは就寝前には控えた方が良いでしょう。
悩み事や考え事が頭の中を巡っていても、脳が覚醒したままになります。それでも眠れるうちはいいですが、いよいよ眠れない日が続いて苦しい時には、悩みが解決するまでの間、一時的に睡眠を補助する薬を使う方が楽ですので、医師に相談してみましょう。昔と違って、最近は依存性のない新しい睡眠薬が使用できるようになり、安全性は格段に上がりました。
■睡眠と覚醒を意識して!
さて、睡眠もそうですが、それと同じくらい覚醒も重要です。人間は光を浴びてメラトニンという覚醒ホルモンが活性化されますので、朝起きたらまずはカーテンを開けて光を浴びましょう。皮膚の表面温度を下げるのも覚醒に有効ですので、冷たい水で手を洗ったり、裸足(はだし)で冷たい床の上を歩いたりするのも目覚めに効果的です。そして、よく噛(か)むことも覚醒に有効と言われていますので、ぜひ朝食をよく噛んで食べましょう(私は毎朝コーンフレークをよく噛んで食べています)。
日本は、世界的にみても睡眠不足の人が多い国とされています。睡眠と覚醒の2つを意識して、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか?
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