市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長 谷崎 隆太郎 医師
【質問】インフルエンザの予防接種について教えてください。
【回答】接種することで、さまざまなメリットがあります。
■インフルエンザワクチンの効果
インフルエンザ発症予防に対するインフルエンザワクチンの効果は、だいたい40~60%と言われており、その防御効果は完全ではありません。発症予防という点だけで判断すると何となく効果が弱い気もしてしまいますが、一方で、例えば集中治療室へ入るような重症化を59%低下させたり、入院するリスクを80%低下させたり、仕事の病欠を40%減らしたり、施設入所中の高齢者の死亡を80%減らしたり、といった「その他の効果」がてんこ盛りなので、総合的には接種するメリットが十分にあるワクチンと言えます。
これは小児から高齢者まで見られる効果で、基本的にインフルエンザワクチンは生後6カ月以降の全ての人に推奨されるワクチンです。持病のある人はインフルエンザにかかると重症化する危険性が高いため、より推奨されます。また、このワクチンは妊婦の皆さんも安全に接種することができるだけでなく、妊娠中に接種することで、生まれてすぐのわが子に「抗体」というお守りをプレゼントすることができるのです。
■接種のタイミングンフルエンザは例年12~1月ごろに流行することから、このワクチンはそれ以前の10~11月ごろに接種することが勧められます。基本的には年に1回の接種でOKですが、WHO(世界保健機関)は、8歳以下で一度もインフルエンザワクチンを接種したことがない人には4週間間隔で2回接種を勧めています。日本では8歳ではなく12歳以下の人に2回の接種を勧めています(厚生労働省インフルエンザQ and Aより)。なお、このワクチンの効果は接種した2週間後から5カ月程度続くと考えられています。
興味深いことに、子どもたちがインフルエンザワクチンを打つことによって、その地域のインフルエンザ患者数が減ったり、高齢者の死亡者数が減ったりといった集団への効果も報告されています。要するに、子どもから他の家族への感染を防ぐことが、地域全体の感染者数を減らすことにつながっているわけですね。
■インフルエンザワクチン接種の検討を!
というわけで、インフルエンザワクチンは個人の健康という点でも、集団の健康という点でも、接種するメリットがあるワクチンと言えそうです。幸い、私は持病もなく健康で働けていますが、インフルエンザによる病欠の回避という効果を狙って、11月ごろにインフルエンザワクチンを接種する予定です。
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