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二見に生きた画人 中村左洲(さしゅう)ー活(いき)・生(いき)・粋(いき)の絵画

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三重県伊勢市 クリエイティブ・コモンズ

【中村 左洲 生誕150年記念特集】

今年、郷土の画家である「中村左洲」の生誕150年を記念して賓日館で中村左洲展を開催します。(詳細は本紙5ページをご覧ください。)

中村左洲〔明治6(1873)年〜昭和28(1953)年〕は、現在の二見町今一色にある漁師の家に生まれました。本名は佐十(さじゅう)。幼い頃より魚鳥草花を写生して過ごしました。漁業に励む傍(かたわ)らでも、僅(わず)かな時間を見つけては、絵を嗜(たしな)んでいました。
そして18歳の時に宇治の画家磯部(いそべ)百鱗(ひゃくりん)に師事した左洲は、画家としての腕を磨きます。その後、明治38(1905)年の第4回内国勧業博覧会に作品を出展し受賞するなど、画家として大成しました。

■鯛の左洲
左洲の絵画と言えば、「鯛」は外せません。漁師の家に生まれた左洲にとって、幼い頃から見慣れた「海の幸」の数々は、得意な画題の一つでした。
また、観察を重視する左洲の描写は、魚や虫、鳥などの生物と相性の良い画題でもありました。
特に「鯛」は、縁起物として祝いの席に重宝され注文も多く、左洲作品を代表する画題になりました。海中を泳ぐ鯛の姿を正面、横、上からなどさまざまな角度から描いており、観察力の高さがうかがい知れます。
現在では「鯛の左洲」とも呼ばれ、今も地元二見で親しまれています。

■神都画人と左洲
左洲は、円山四条(まるやましじょう)派という被写体をありのまま描くこと(写実性)を重視する流派の系譜に属します。四条円山派とも呼ばれ、江戸時代中期に成立した絵画の流派の一つで、円山(まるやま)応挙(おうきょ)が開いた円山派と、呉春(ごしゅん)が興(おこ)した四条派の総称です。18世紀中頃、京都を中心とした新進気鋭の画家たちが真の絵画の在り方を模索した結果、狩野派や水墨画の技法をベースに、よりリアルな絵画を目指した流派です。
伊勢の地にこの円山四条派を広めた人物が円山応挙の直弟子である岡村(おかむら)鳳水(ほうすい)で、その弟子の系譜が、上部(うわべ)茁斎(せっさい)、林(はやし)棕林(そうりん)、磯部百鱗と続き、そして明治時代を迎えます。明治時代以降も円山四条派は盛んで、百鱗の弟子たちがその担い手でした。左洲も百鱗に絵を学んだうちの一人です。左洲のリアリティー溢(あふ)れる作風は、円山四条派の流れを汲むものです。
左洲が画家として大成した背景には、伊勢のまちで育まれてきた文化芸術の素地(そじ)があったことも大きく影響しているのです。

■学芸員のつぶやき
〔寿鯛〕中村 左洲
真鯛の背中にある青い輝点と呼ばれる模様が描かれています。真鯛をよく観察していたことがわかります。

〔虫の行列〕 中村 左洲
大名行列の図を虫に置き換えたユニークな作品。描かれた虫は、国宝「鳥獣人物戯画」のように擬人化され、二足歩行となっています。
■学芸員のつぶやき
遊び心も左洲の魅力
○その1 秋の草花
秋の七草の一つフジバカマと金色に実った稲穂が描かれており、秋をテーマにした作品であることがわかります。

○その2 精密な虫の描写
虫の描写がとても精密で、図鑑で虫の種類がわかるほどです。カマドウマは腹部から伸びる卵管からメスであることがわかります。

○その3 洒落(しゃれ)た描写
2足歩行していない大きな虫はクツワムシです。大名行列の図で馬のいるあたりに描かれています。轡とは馬具の一つであるため、それを見立てて描いたものと思われます。

〔漁夫之図〕 中村 左洲
漁師の家に生まれたこともあり、漁の様子は左洲の得意な画題の一つです。

■左洲と賓日館(国指定重要文化財)
左洲は、明治34(1901)年に二見館を経営する若松(わかまつ)徳平(とくべい)の四女小(こ)さいと結婚します。賓日館は、明治20(1887)年に皇族などの賓客の宿泊施設として建設、その後、明治44(1911)年に隣接する二見館に払い下げられ、別館になります。二見館別館になった後に増築された大広間の舞台に左洲が老松図を描くなど、若松家との関係が偲(しの)ばれます。

■企画展開催案内
令和5年度文化政策課夏季企画展 中村左洲生誕150年記念展
二見に生きた画人 中村 左洲

縁のある賓日館で展示会を行います。

開催日時:令和5年8月5日(土)~8月31日(木)9時~17時(最終入館は16時30分)
会場:賓日館 〒519-0609 二見町茶屋556-2
観覧料:大人310円 小人(小・中・高)150円
休館日:毎週火曜日(8日・15日・22日・29日)
展示解説:(1)8月6日(日)(2)8月11日(祝)各回13時30分~14時30分
映像展示:左洲の描いた鯛などの魚を泳がす映像展示を行います。
(1)8月6日(日)(2)8月11日(祝) 各回14時30分~15時30分
主催:文化政策課【電話】22-7884【FAX】21-0424【メール】bunka@city.ise.mie.jp
共催:特定非営利活動法人 二見浦・賓日館の会

問い合わせ:文化政策課
【電話】22‒7884【FAX】21‒0424

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