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伊賀の歴史余話(31)

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三重県伊賀市

■伊賀の偽文書(ぎもんじょ)
〜「まるまん文書」が語る虚構〜

市内で歴史資料の調査をしていると、まれに記述や筆跡、紙質に不可解な点のある古文書に出会います。このような時に頭をよぎるのが、伊賀で密かに作られた偽文書「まるまん文書」の存在です。
偽文書は、家柄や土地柄に権威を付けるため、時代を越えて全国各地で作られました。明治期の伊賀で作られたとされるまるまん文書は、その存在の有無を含め、謎に包まれていました。しかし、近年になって約80点にもおよぶ文書が発見され、その特徴が明らかになりました。
まるまん文書が描くのは、地域の来歴や寺社の由緒です。『吾妻鏡(あづまかがみ)』などの実在する歴史書からの引用を騙(かた)り、式部塚(喰代)や兼好塚(種生)などの各地に残る伝承を組み込むことで、どこかで聞いた話という信憑(ぴょう)性を補いながら、虚構の歴史を作り上げています。
その最大の特徴は、文書が「中出清閑坊博霞(せいかんぼうはくか)」なる人物によって書かれていることです。もちろん架空の人物です。清閑坊は、古くから伝わった書が水難で破損したため、改めて書写したと、文中で文書作成の経緯を説明しています。しかし、これは偽文書を作る際の常套(とう)手段です。書写ならば紙質が新しいことへの疑問は消え、記された内容自体は古くから伝えられたと主張できるのです。
まるまん文書には、資料価値を高めるための表装、年代を古くみせるための古色を施した痕跡も見られます。これらの文書が、どれほど地域に流布したのかは不明ですが、実際にまるまん文書を書写した資料も確認されています。案外ひっそりと、しかし確実に地域の歴史に浸透しているのかもしれません。

問合せ:文化財課歴史資料係
【電話・FAX】41・2271

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