■市指定文化財(彫刻)
◇鸕宮(うのみや)神社の石灯籠
島ヶ原の鸕宮神社では、12月中旬に日本一遅い秋祭りと呼ばれる例大祭が行われます。秋祭りのメインとなるのが獅子舞です。島ヶ原地区の大道、奥村・中村、町・山菅・川南、中矢の集落から各一頭、計四頭の獅子が登場します。神社境内では、大広前、五段神楽、剣の舞、鼻高など獅子舞が奉納されます。
この鸕宮神社で目を引くのは、入口にある背丈をはるかに超える大きな石灯籠です。
この石灯籠は、高さ16尺(4.85m)、台石から宝珠までの総重量一四四七〇貫(54,263kg)の非常に大きいものです。正面には「奉燈」、側面には「天下泰平」「日月清明」「国家安穏」を祈願する文言が刻まれており、背面の碑文からは石灯籠建立の由来を読み取ることができます。
碑文には、田畑の境界が錯綜(そう)し、相続に難儀していたので8カ年の歳月をかけて調べ上げたことなどが記されています。そして天保14(1843)年9月に、無事検地を終えたことを氏神である鸕宮神社に感謝して石灯籠を建立しました。
江戸時代の伊賀国では、元禄年間(1688〜1704年)を中心に検地が行われましたが、江戸時代後期に検地が行われたところもありました。一筆ごとの田んぼの面積を測り収穫量を計算する検地は、大変な労力を要する難事業でした。石灯籠の奉納は、検地の事業完了の意義の大きさを物語っています。
ところで、この石灯籠の特徴は、加工された石材を組み合わせる石灯籠と異なり、自然石をそのまま使ったように見せていることです。同じような石灯籠は、荒木の須知荒木神社前にもあります。
島ヶ原の秋祭りでは、獅子舞とともに、立派な石灯籠もご覧いただき、江戸時代の人びとの願いや労苦に思いを馳せてはいかがでしょうか。
問合せ:文化財課
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