■赤紙(召集令状)
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアでは、昨年4月に兵役を課す招集令状を電子化する法案が可決されました。紙面での交付をオンラインに変えることで、兵役逃れを防ぎ、兵員を確保することが狙いとされています。
兵役義務が定められていた戦前の日本では、召集の際に紙面での令状が発行され、紙の色から白紙や青紙、赤紙などと呼ばれていました。色の違いは召集内容によるもので、演習・教育のための動員は白紙、空襲に備える国土防衛の短期動員には青紙が発行されました。
召集令状の代名詞となった「赤紙」が使用されるのは、戦時に陸軍が予備役などの在郷軍人を動員する場合です。そのため戦地へ赴くことに直結する令状といえます。
かつての古山村役場に残された赤紙を見ると、表面に参集すべき日時と場所、召集部隊の名前を記す欄があり、ミシン目で受領証を切り離すように作られています。
赤紙は、役場の兵事係などが本人の家まで届けていました。届けられるのは、軍事機密のため夜間が多かったそうです。そして、赤紙は参集場所に出頭する際に持参する必要があったため、本人の手元に残ることがありませんでした。
伊賀町郷友会が刊行した戦後五十周年記念誌『平和への足跡』には、赤紙が届けられた場面が克明に記されています。「今晩は」と「おめでとう」の言葉の後に「ご苦労さまです」と渡される赤紙、受け取る妻の震える手の記憶です。
紙切れ一枚で人びとを戦地へと送る国家、その一枚の紙さえ直接、届けることのない現在のロシア、いずれにせよ人命の尊さを軽んじる戦争というものに戦せん慄りつを覚えます。
問合せ:文化財課歴史資料係
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