■財政が厳しい根本的な要因
急増した人口が減少に転じる中、社会保障費や公共施設更新に必要な経費が増大。過去の借金が市財政を圧迫し、新たな支出に対応できない状況に陥っています。
◇人口急増に対応するため、公共施設を一気に整備。更新にかかる経費が増大
急増する人口に対応するために、市では公共施設や道路、公園などを短期集中的に整備してきました。人口が減少に転じる中、昭和後半期から平成前半期に整備した公共施設などの老朽化、更新期を迎え、維持補修や延命化にかかる経費が増大していきます。
◇公共施設は、借金で整備。将来世代が減ると、返済が苦しく
公共施設は、多くの人が長い間利用します。そこで、「現役世代」と、後に引っ越してくる人や将来納税の義務を負う若い人たちなど「将来世代」との負担を公平化するため、長期での借金をして整備します。
しかし、将来世代が減少していくと、計画的な借金返済が難しくなっていきます。また、自治体の多くは「都市計画税」を賦課して公共施設整備の財源に充てますが、名張市は借金のみで対応してきたため、「将来世代」の負担は他自治体に比べて大きくなっています。
その結果、将来負担比率(収入に対して将来市が負担する借金などの割合)は、名張市と人口などが類似する自治体と比較して、非常に高くなっています(R4決算で全国1,741団体中、ワースト15位)。
※財政調整基金残高の増加に伴い近年は「将来負担比率」が下がっているものの、今後は上昇する見込み
◇高齢化が急速に進み、扶助費が増大
昭和56年に人口増加率が全国一となるなど、人口が急増した名張市。全国平均の倍のスピードで高齢化が進み、団塊世代が後期高齢者となる中、福祉サービスに必要な扶助費が増大しています。
◇借金返済や扶助費の増大が負担となり、ゆとりがない
経常収支比率は、経常的な収入に占める、人件費や公債費、扶助費といった経常的な経費の割合。類似団体と比較して高い値となっています(R4決算で全国1,741団体中、ワースト26位)。
扶助費の増大や過去の借金返済が大きな負担となっている中、市の財政はゆとりがなくなっていて、市民ニーズに柔軟に対応したり、急な支出に対応したりすることが難しい状況です。
◇国による標準的な財政措置では、立ち行かない状況
標準的な行政サービスを保障し、自治体間の財政力格差を調整する国の地方財政措置がありますが、名張市では、これを超える決算額が続いています(特に公債費・民生費・衛生費)。
平成28年度から令和5年度まで、一般会計の収支は黒字でしたが、都市振興税の財源(約8.5億円)がなければ、毎年3~7億円程度の赤字。さらに不足する分は、行政改革推進債(赤字債)などの借金で収支を黒字化してきたのが実情で、財政調整基金を積み上げてきたものの、根本的な財源不足が続いている状況です。
■Q 都市振興税(~R5)はどのように使われてきたの?
■Q 借金残高は減っていく?
これまでの見通しでは、「市立病院建設時などの借金返済が段階的に減少していく」とし、都市振興税終了後も収支が黒字となる根拠の一つとしていました。
令和5年度まで着実に借金(市債)残高を減らしてきたものの、11月の中期財政試算では、クリーンセンターの機器更新や中学校給食施設整備など、今後5年間に投資的事業が集中するため、再び増加する見込みとなっています。
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