■利用者
◇福西一美さん
人間関係に悩み、だんだん鬱(うつ)の症状も出てきて…。
最初は家の外に出ることが辛かったのですが、ジョブトレーナーの皆さんがいつも笑顔で迎えてくれるので、めばえファームに来ることが本当に楽しみになりました。
人付き合いは苦手でしたが、今ではスタッフやジョブトレーナー、他の利用者とのコミュニケーションも楽しみの一つ。常にだれかが笑っている、笑顔が絶えない場所です。
笑って仕事もできるようになったので、一段階上の仕事もしてみたいです。
◇平島靖之さん
家にひきこもっていましたが、めばえファームでしっかりと体を動かすようになり、夜もぐっすり眠れるように。今は、前向きな気持ちで家を出られるようになりました。
どんなに簡単な作業でも、ジョブトレーナーさんが褒ほめてくれるのがうれしくって。無理せず自分のペースで取り組めるので、大変と感じたことはありません。
まだ不安なところも多いので、しばらくはここで作業を続けていきたいです。少しずつでもいいので、ステップアップしていけたらいいな。
◇川澤海希(ひろき)さん
働くことに対して不安があったのですが、農業関係の学校に通っていたので、めばえファームでは、学んだことを生かせると思いました。
めばえファームに来るまでは夜眠れなかったり食欲がなかったりしたのですが、ここに来るようになってからは十分睡眠をとれるようになって、もりもりご飯を食べています。仲間とたくさん話ができることもうれしいです。
精神的にも身体的にも安定してきたら福祉事業所で働いて、最終的には農業に関わる会社に勤めたいですね。
■農業ジョブトレーナー
◇林新(あらた)さん
定年後、社会貢献できればと養成講座に妻と参加。自分の子どもにも障害があるので、これまでの経験も生かしながら、利用者さんに接しています。ただ、一方的に農作業を教えるのではなく、互いに教え合っている感じですね。
◇木賀(きが)利江子さん
利用者さんと互いにできたことを共有して一緒に喜べるのがとてもうれしい。全てを手伝うのではなく、適切に声をかけられるよう気を配っています。この活動で、自分も成長できるし、私の生きがいにもつながっています。
◇山村春子さん
草を抜いていると、近くの玉ねぎも一緒に抜いてしまった私。「こんな風に抜けてしまうからきちんと押さえて抜こうね」と利用者さんに伝えて一緒に笑って。失敗も共有しながら、楽しく作業しています。笑顔があるとほっこりしますよね。
◇小松義尚さん
実家は農業をしていて、福祉施設にも勤めていたので、ちょうどいいなと。まだ、トレーナーになったばかりですが、利用者さんの作業の手際の良さには驚かされます。一人ひとりに応じた接し方ができるようになるのが目標です。
■めばえファームでの作業はさまざま
現在、「めばえファーム」の利用者は10人ほど。種まきから収穫までの農作業全般と、野菜の洗浄や袋詰め、販売も行っています。
農業は、細かい作業から力仕事まで、就業に向けてのさまざまな作業を経験できるのがいいところ。さらに、時期によって栽培する野菜や必要な作業が異なります。
ここでの作業は、週に2回、それぞれ2時間ほど。福祉事業所での雇用時間は4時間ほどなので、医師などから就労時間を制限されている場合の受け皿としての役割も担っていて、利用者への工賃は、障害者アグリ雇用推進協議会から支払われています。
■一人ひとりに寄り添う農業ジョブトレーナー
「めばえファーム」で活動している農業ジョブトレーナーは15人。一人あたり月に1〜2回ほど作業を支援しています。ここでは、トレーナーの研修も行っています。
基本的に1対1での支援となりますが、誰が誰を支援するかは、偏らないようにしています。これは、利用者ができるだけいろんな人とのかかわりを持てるようにするため。農業ジョブトレーナーには、作業の日の朝に「この利用者にこういう作業を教えてください」と依頼しています。もちろん、男性が苦手な利用者には女性のジョブトレーナーが対応するなど、利用者に合わせて担当者を決めています。
また、利用者は、複雑な作業が苦手なことも多いため、一日に同じ作業を担当しますが、必要に応じて異なる作業を組み合わせることも。こうした場合も、農業ジョブトレーナーが、一人ひとりに寄り添いながら、丁寧に対応しています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>