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海中さんぽ

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三重県尾鷲市

市水産農林課 石川主任技師の第19回日本藻類学会研究奨励賞受賞記念

■ガンガゼ[後編]
本市水産農林課の石川主任技師によって、ガンガゼの除去による効率的な藻場(もば)の再生手法が研究成果として取りまとめられたことにより、市内外への藻場再生の取り組みが広がりました。平成25年より尾鷲湾と九木浦で、平成28年より三木浦でガンガゼの除去活動が始まり、市内の「磯焼け」からの藻場の再生面積は着実に増加しています。
藻場はイセエビ、アワビ、サザエやカサゴ(ガシ)、メジナ(グレ)、ブダイ(イガミ)などの生息場、エサ場であり、また、アオリイカなどが卵を産み付ける産卵場であるなど、多様な機能を提供してくれます。藻場が増えるということは、このような水産資源が増えることにつながります。
そして、海に垣根は無いため、藻場再生の取り組みが市外、県外に広がれば、市の水産業にとってプラスになると考えられます。
しかしながら、近年は黒潮大蛇行に伴う海水温の上昇等の影響に伴い、南方系の海藻が増える、あるいは大型の海藻が減って小型の海藻の割合が増えるなど、環境は刻々と変化しています。藻場再生によって増加傾向にあったアワビやサザエが姿を消してしまうほど、変化は劇的なものです。
現在、磯焼けから藻場を再生した範囲では、ガンガゼの劇的な増加や大規模な磯焼けは確認されていません。そのため、藻場を再生した後はガンガゼの除去数や頻度を減らしても、藻場を維持できる可能性があると考えています。
一方で、ガンガゼに寄生するガンガゼヤドリニナという巻貝や、ガンガゼを住み家にするハシナガウバウオ、ガンガゼカクレエビなど、ガンガゼを利用している生物もいます。石川主任技師の研究により1平方メートルあたり約2個体以下であればガンガゼが存在しながら、藻場が維持されることもわかっています。ガンガゼは海藻を食い荒らす悪者ではなく、昔から存在している生態系の一員なのです。
石川主任技師は、ガンガゼの新規加入や成長速度、寿命などの研究に取り組んでおり、これからの新たな発見が期待されます。

※アクアステーションでは「ガンガゼ博士コーナー」を設けています。
※石川技師が自身の研究を紹介する「ガンガゼ研究者の研究記録」はこちら
(※詳しくは、本紙に掲載の二次元コードを読み取ってご覧ください。)

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