■リョウメンシダ(オシダ科)
葉の裏表は、見た目で何となくわかります。とくにシダ植物の場合、葉の裏には胞子が付いていたり、色が表と比べ薄かったりで裏表がはっきりしています。
ところが物事には常に例外があるように、表も裏も同じように見えるシダがあります。リョウメンシダという名前のシダがそうです。今年出た葉に胞子がまだ付いていない時期は、両面とも同じような薄緑色をしていて、どちらも同じように見えるところから「両面シダ」と呼ばれています。
分布は北海道から九州までと広く、尾鷲地域でも普通に見られるシダです。やや湿った林地を好み、このシダが群生するところはスギを植えるとよく育つと言われています。
花を咲かす植物は種を作り仲間を殖(ふ)やしますが、シダは花を付けず種もできません。大きさ0.05mm前後の小さな胞子を葉の裏に作り、仲間を殖やしています。シダの胞子が熟して発芽するようになるのは夏から秋にかけてですが、リョウメンシダだけは違っていて、冬の寒い時期です。
雪国では、雪に埋もれた中で胞子が成熟し、雪解けとともに胞子を飛散させているようです。他のシダ植物が休眠しているときに、リョウメンシダは寒さの中で静かに活動しています。
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