■ウツボ
ウツボはウナギ目ウツボ科の魚で、房総半島以南の沿岸の岩礁域(がんしょういき)に分布しています。当地では主に、筒を使った漁法で漁獲されています。繁殖期は夏で、孵化(ふか)した稚魚(ちぎょ)はウナギと同様、レプトケファルスといわれる透明な柳の葉の形をしています。夜行性でエビ、カニの仲間、魚類をエサとし、特にタコを好んで食します。イセエビはタコが天敵なので、タコの天敵であるウツボと同居して、身の安全を守っていることが、よく観察されています。ウツボは歯が鋭く、獲物に噛みつくと回転するので、噛みつかれた獲物は引きちぎられてしまいます。ウツボに足を噛み千切られた、足が8本に満たないタコを見かけるのは、珍しいことではありません。
一方、近年の黒潮大蛇行(くろしおだいだこう)に伴う高水温化によってウツボが増え、イセエビ漁に被害を及ぼすウツボを積極的に漁獲するようになったという報道も見受けられます。ウツボは刺し網にかかった魚を食べる上、ウツボが網を破るなどの被害が起きているようです。ウツボは嗅覚が発達しているため、網にかかった魚の匂いを頼りに網にたどり着けるのでしょう。自分自身の経験としては、磯で釣れた魚をスカリという網に入れ、磯の近くに浮かべていた際、ウツボに網を破られ、魚を食べられたことがあります。
厄介者扱いされがちなウツボですが、太平洋沿岸各地に食文化があり、当地では一般的に干物として食されます。ウツボはコラーゲン等の栄養が豊富で、きれいな白身をしています。ただし、ぬめりが多いほか、複雑な小骨が多く、骨を取り除くようにおろすには熟練の技術が必要です。そのため、食文化があるところには、そのような加工技術が支えとなっているようです。
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