障がいがある人が農業分野で活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく農・福連携について、10年にわたり取り組むシグマファームとういんの小野寺仁さん・大西順子さんを迎え、水谷町長とお話しいただきました。
■荒れた土地に初めての農作業を模索する日々
町長:東員町は、障がい者の就労にスポットを当てて取り組んでいます。シグマファームとういんは、10年前に就労継続支援A型事業所としてスタートし、大変苦労されたと思います。本当にありがたく思っています。まだまだ課題もあると思いますが、町もバックアップできるところがあれば協力していきたいと思います。本日はよろしくお願いします。
○東員町で就労継続支援A型事業所として取り組むことになったきっかけは?
小野寺:三重県は私どもシグマグループにとって創業の地の1つです。多様な働き方による新たな雇用機会を作りたいという経営目標を「この三重の地で実現したい」というグループの思いと、水谷町長の「東員町でより多くの障がい者の就労機会を増やしたい」という思いが合致し、設立に至りました。
○農業を核としたA型事業所を運営してきて、率直にどうですか?
小野寺:農業はマイペースに行えるので、障がいがあるシグマファームとういんの従業員(以下、利用者)にとって、取り組みやすい業種だと思います。土壌整備、種まき、定植、収穫、加工、販売とそれぞれ作業を切り分けできるため、農業を選択して良かったと思っています。
町長:私はシグマファームとういんの設立の前年に、農・福連携の先進自治体である北海道芽室町へ行き、いろいろ研修させてもらいました。東員町にもたくさん農地があるので、取り組んでいただける会社があればと思っていました。開所の時は、利用者も含めて8人しかいなかった上に、農地面積が1.3ヘクタールあり、しかも耕作放棄地でかなり土壌も荒れていたので心配しました。そこから、行政もできる範囲でお手伝いしながら、10年でここまでやっていただけているのは、とてもありがたいことだと思います。
大西:私が農学部出身ということもあり、シグマファームとういんで働き始めた当初は、この面積の畑からどれだけ収穫ができるのかと聞かれ、全国平均収量くらいは採れるのではと話していました。しかし、実際にはとてもそんな状況ではありませんでした。あれだけ荒れた土地を元に戻すことはとても大変でした。5年ぐらい経って「前より良くなったね」「土の色全然違うね」とようやく言われるようになりました。
町長:当時、耕作放棄地で雑木林みたいになっていた場所を、せっかく畑に戻したという経緯があり「何とかしたいな」という思いがありました。シグマさんには大変な状況の中で飛び込んできてもらい、とても感謝しています。
大西:私は、自然が好きで生物に関係したことをやりたい、環境に優しいことをやりたいと思っていました。農業という形で仕事をするのはシグマファームとういんが初めてで、農業を生業としてお金を得ることの難しさを感じますが、それ以上に楽しい仕事だと思っています。何より利用者が生き生きと働く姿を見ると、とてもやりがいを感じます。
小野寺:私は、シグマファームとういんを設立するために、単身で赴任し2年で戻る予定でした。赴任当初は、農業について全く知らない状態でしたのでとても不安でしたが、いつの間にか10年が経過します。
町長:本当によく頑張っていただいています。当時は、全く農業を知らないと言っていたので、大丈夫かなと思っていましたが、結果的に小野寺さんで良かったと思います。
小野寺:私は、たまたま神奈川県の地元で採用されて、一番近い営業所で勤務していました。周りの人はどんどん異動で入れ替り、私だけ残っていたので、いつか異動があるかなと覚悟はしていましたが、まさか東員町で農業をするとは思っていませんでした。
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