デジタル機器やIT技術を活用したICT教育が本格導入され、教育の分野ではDXがますます進んでいます。
今月は、市内での取り組みをご紹介します。
■子どもが自ら考え、多様な考えと出会い思考を広げて深めていく授業へ
本市では、「くわなっ子教育ビジョン」をもとに教育環境の整備や取り組み内容が決められています。くわなっ子教育ビジョンは、目まぐるしく変化する社会状況の変化にも取り残されず、自ら考え、主体的に取り組み、他者と協働しながら課題解決を推進する人材を育てることを主な目的としています。そのため、先生が一方的に説明するのではなく、「子どもが主役」の授業を展開すること、ICTを効果的に活用することなどに取り組んでいます。
生まれた時から周りにスマホやインターネットがある現代の児童・生徒にとって、デジタルツールは鉛筆や消しゴムと同じ、学習のための「道具」です。小学校入学時に、児童1人に1台のタブレットが貸与され、「学習以外の使用をしない」「大切に持ち運ぶ」などのルールを伝え、誓約書に保護者がサインします。導入当初はさまざまなトラブルがあったものの、今では使いこなしている児童が多いそうです。
■[タブレット授業]即時共有が可能なタブレットへの入力でクラスメイトの考えに触れ、自分の考えを広げていく
タブレットは、主に「共有」を目的とした使い方をすることが多いそうです。まず授業の初めに、授業の課題と具体的な流れ、何をするのか、評価の基準を「Googleクラスルーム」というアプリを使って児童全員に伝えます。授業中は児童が自身の考えを「ロイロノート」というアプリに入力していきます。入力した内容は先生をはじめ、クラス全員に共有することができるため、クラスメイトの考えと自分のものを比較することで新たな視点での学びがあるほか、課題に行き詰まった児童も取り残されることがありません。多様な価値観や考え方に触れ、他人と協調する力が育まれることが期待されています。「児童はリアルタイムでクラスメイトのロイロノートを閲覧することができるので、自分と似た考え、あるいは全く別の考えを持つ子のところへ行って詳しく話を聞きます。その中で他人の考えを尊重するという意識や、自分の考えを深く掘り下げるということを学びます。その力は、今後子どもたちが生き抜いていくために必要になるはずです」と中村先生。また、先生は一覧表示によって児童の考えやまとめた内容を確認することができるため、ノートを集めて一つずつ確認する手間が省けると言います。
他にも、ロイロノートを活用し学習の記録を蓄積したり、黒板を写真で撮ったりすることもできるため、ノートに書き写す時間を、話し合い活動の時間(協働的な学びの時間)に使うことができる点や、プリント類は全てデータとして配れるため準備のコストが削減できる点など、メリットは多々あります。
○教えてくれたのは
大山田北小学校
中村蓮大(なかむられんた)先生
・プロジェクターでGoogleクラスルームを投影し、その日の授業の流れや具体的な課題、評価基準までを初めに提示します。
・クラスメイトのまとめた内容が一覧表示され、共有されるため、多様な考え方に触れることができます。
・子どもたちはロイロノートで自分と似た考え、異なる考えを確認し、当人に詳しく話を聞きに行きます。
■[デジタルツイン・リモートマイスター]空間を移動して時間を有効活用学びの意欲が広がる
施設などを3Dデータ化したデジタルツインは、ネット上で自由に探索可能なツールです。現在、六華苑と寺町通り商店街のデジタルツインが公開されており、児童は社会見学の事前学習に利用しています。寺町通り商店街なら「どんなお店にどんなものが売っているのか」など、店内まで確認できます。現在は播磨浄水場のデジタルツインを製作中で、いつでも社会見学が可能に。学習意欲を損なわず、いつでも学ぶことができます。
リモートマイスターは、スマートグラスを使用することで高画質かつ遅延のないリアルタイムな会話が可能なデジタルツールです。金属加工現場や給食室など、大人数での見学が難しい職場の見学や、桑名の伝統「連鶴」を折る職人の手元を精細に確認することができます。他にも、修学旅行の下見や学校視察、実験見本など、これまで負担が大きかったことを画面上で共有することができるため、さまざまな活用方法を模索中です
・キャリア教育の一環として、中華料理店の人にスマートグラスを着用してもらい、料理人の視点で学びました。・六華苑のデジタルツイン。360°カメラで撮影されており、現状を確認することができます。
○教えてくれたのは
水谷精機工作所
DX事業部
清水悠太(しみずゆうた)さん
■[デジタル採点]教師の働き方改革を推進しテスト解答傾向に沿った指導が可能に
教育DXは、子どもたちだけでなく教える先生たちにも良い影響を及ぼしています。「リアテンダント」というデジタル採点システムは、紙の答案用紙をデジタル化し、パソコン上で採点できるシステムです。点数が自動集計されるという単純な時間削減効果はもちろんですが、何よりも大きなメリットは、同一問題の解答欄全員分が一覧表示されること。これにより、採点基準を守りつつ、短時間での採点が可能になりました。
国語の伊藤先生は「例えばここまで書けていたら部分点として4点、ここまでだったら3点など、採点基準が複雑になりがち。これまでは他の解答を見返しながら基準の確認をしていたため、丸2日かかっていましたが、今は1日あれば採点が終わります」、数学の梅山先生は「一括採点ができるので、採点の時間は半分くらいに減少しました」、英語の出口先生は「問題に対する解答傾向などの分析がすぐにできるので、答案返却時の解説の仕方に役立ちます」と話してくれました。
▽教えてくれたのは
光陵中学校
左から
英語 出口渡季(でぐちとき)先生
数学 梅山綾斗(うめやまりょうと)先生
国語 伊藤真理(いとうまり)先生
問合せ:この記事については秘書広報課
(【電話】24-1492【FAX】24-1119)
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