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シリーズ人権 第104回

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三重県津市

■心が通った瞬間~2007年夏~
私は小学生の頃、地元のサッカークラブに所属していました。田舎の小さなクラブということもあり、所属している選手のほとんどは幼い頃から顔なじみでした。
4年生の時に、隣町に住んでいた外国籍のAさんが入団してきました。日本語が上手に話せない彼は上手くコミュニケーションが取れず、チームの雰囲気に溶け込めていないようでした。外国籍の子と初めて接する私もどうしていいのか分からず、声をかけることなく距離を置いてしまっていました。
そのような中、迎えたサッカー大会で、試合の終盤に出場したAさんが見事にゴールを決めました。その時彼は、これまで一度も見せたことがなかったとびきりの笑顔で、パスを出した私の元に駆け寄り、ハイタッチを求めてきました。私は驚きましたが、彼の笑顔を見られたことでたまらず嬉しくなり、気付けば全力でそれに応えていました。
そのたった1回のハイタッチで私の中の何かが動きました。Aさんにとっても、これがきっかけとなったのか、彼はその後、得意なプレーやパスが欲しいタイミングなどを簡単な言葉やジェスチャーで表現するようになりました。また、私たちもどうすれば彼に伝わりやすいかを小学生ながらに考えるようになりました。そうすることで「伝わらなかったらどうしよう」という不安や羞恥心などが少しずつなくなり、当初感じていた距離が縮まっていきました。
残念ながらAさんは6年生の時に引っ越しをすることになり、退団式ではみんなで涙を流しながら別れを惜しみました。お互いの心の壁を壊すきっかけとなった、あのハイタッチの感覚を私は今でも鮮明に覚えています。
大学生の時には、留学生のBさんと出会う機会がありました。Bさんは日本のサッカーに興味を持っていました。
当時、サッカー部でキャプテンをしていた私は、今度は自分から行動を起こすことにしました。部員ではないBさんがいつでも見学に来られるよう、サッカー部の練習や試合の日程を連絡したほか、日本の有名なサッカー選手について話をしたり、一緒にボールを蹴ったりして、たくさん交流することができました。彼とは今でも連絡を取り合ってよい関係を築いています。
大学卒業後、社会人となった私が最初に配属された職場には、年齢や性別、国籍を問わず、多くの人が手続きに来られました。
しかし、外国籍の人が来られた際には、少し身構えてしまう自分がいました。今回の執筆を通して、日々の生活の中で無意識に心の壁を作っていることに気付くことができました。
多様な人との出会いがある現代において、国籍に関わらず一人一人を尊重し、認め合うことが大切です。まずは自分自身が心の壁をなくし、固定的なイメージや偏見を持たずに接していきたいと思います。また、心の壁を作ってしまった時は、それに気付き、変えていける自分でありたいと思います。
(20代・男性)

問い合わせ:人権課
【電話】229-3165【FAX】229-3366

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