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シリーズ人権~第102回~

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三重県津市

■母の思いから~寄り添い、共に考える~
私の母は今年で81歳を迎えますが、昔から家族のために一生懸命になってくれる人です。そんな母は、定年退職後10年程して認知症を発症した父の日常生活を支えていました。徐々に身体的な介護も必要となった父は、施設に入所することになりましたが、75歳で亡くなるまで、母と私はそこに通い続けていました。
生前、住み慣れた愛着のある自宅で、家族と生活しながら介護を受けることを望んでいた父は、顔を合わせるたびに「自宅に戻りたい」と言っていました。しかし、現実には自宅での介護は困難であったため、父のその思いに応える事はできませんでした。
そんな父にとって、一番の楽しみは家族が会いに来てくれる事であったと思います。母としても介護は大変だったけれど、父に会える事が一つの楽しみであったと聞いています。私もまた、同じ思いでした。
父が亡くなって一人暮らしとなった母は、2年前に転倒し、大腿(だいたい)骨を骨折しました。私は母の生活を心配して、入院中にこれからどうしたいかを聞くと、「早く退院して住み慣れた自宅に戻りたい。地域の知り合いや友人と離れたくない」と打ち明けてくれました。そのため、2カ月程入院している間に、母が独りでも移動や家事が出来るように自宅をバリアフリーに改修しました。
高齢者の場合、身体的な衰えは避けて通れません。母は「歳だから仕方がないわ」と納得したように言いますが、少しでも身体が衰えないようにと、日々の短い散歩などをして気を付けているそうです。
私が帰省すると、母はご近所さんが自宅周りの掃除などを手助けしてくれた事や、昔からの知り合いが食べ物の差し入れや体調の心配をしてくれる事を教えてくれます。また、趣味としている人形作りや詩吟で集まる友人の事、同級生と会った時の事などを嬉しそうに話してくれます。このような姿を見るうちに、歳をとっても周囲の人とのつながりの中で、自分の居場所や生きがいを見つけているのだなと感じるようになりました。
今回この寄稿をすることが、改めて母と話をする良い機会となりました。母は「介護する立場や介護される立場、一人暮らしの高齢者の立場になって初めて、その人たちの気持ちが分かるようになった」と伝えてくれました。
この言葉を聞き、私は、父の思いは十分にくんであげられなかったかもしれませんが、将来、母に身体的な衰えが進んだ時でも「母はどのような願いを持っているのか」「母が生きがいを持ち続けられるように、私はどんなことをしていけるのか」を共に考えていきたいと思いました。
人権は年齢により区別されることなく、誰にでも当然にあるものです。高齢者である母の思いに触れて「年齢に関係なく、それぞれの思いが大切にされる社会に近づいていけば」と考えるようになりました。まずは私を含めた周りの人々が少しでも高齢者の思いを聞き、寄り添っていく事がその第一歩になると思います。
(50代、男性)

問い合わせ:人権課
【電話】229-3165【FAX】229-3366

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