■完成目前の大型インフラ
津市長 前葉 泰幸
伊勢湾岸の堤防は、昭和28(1953)年に来襲した台風13号と、昭和34(1959)年の伊勢湾台風により壊滅的な被害を受けたことを契機に、三重県が災害復旧事業として築造したものです。
津市沿岸部は昭和38(1963)年に完成し、栗真町屋以南の海岸については昭和46(1971)年に津松阪港として重要港湾に指定されたことにより国直轄の港湾事業として堤防の整備が行われることになりました。
津松阪港の整備事業は平成4(1992)年度に、まず香良洲工区(2,350m、71億円)から開始され、平成14(2002)年度からの10年間で贄崎工区(2,158m、43億円)も完了。阿漕浦御殿場工区(3,485m)と栗真町屋工区(2,062m)の事業が採択されたのは平成23(2011)年度で、令和2年度には栗真工区(1,165m)への延伸工事が始まりました。160億円が投じられたこの区間もこの春完了する見込みで、栗真から香良洲まで全長11.2kmにわたる直轄港湾海岸堤防がついに完成の日を迎えます。
津市市街地と企業や交通施設、病院などを津波・高潮の浸水から防護するために、国は堤防の老朽化対策だけでなく、南海トラフ地震発生に備えた耐震化も施す抜本的な改良を行っています。
天端高(てんばだか)6mへのかさ上げと劣化コンクリートの打ち換えによる堤防強化に加え、土質調査の結果、地盤が弱く液状化対策が必要と判断された三重大学東側や相川河口付近など1,908mの区間では、地盤改良工事が実施されました。
津ヨットハーバーへの入口となっている堤防開口部には、国内最大幅のフラップゲート式陸閘(りっこう)が設けられました。平時は入口の道路面に格納されている径間20.6m、有効高1.2mのゲートが浸水時の水位上昇とともに人為操作なしで路面から自動的に浮上して開口部を閉鎖します。
□県の海岸堤防整備の展開
国の港湾堤防事業の進捗(しんちょく)を受け、三重県も栗真より北側の全長5.8kmにわたって高さ6mの堤防整備を進めています。漁港事業では、今年度、白塚が完了し、河芸でも工事が始まりました。海岸事業は現在上野地区と白塚地区において進行中で、東千里での事業実施も昨年夏に決定したところです。
□今年完成予定の大谷踏切
津市が事業主体の道路インフラも完成が近づいています。
津駅のすぐ北の大谷踏切は、総事業費34.6億円の大型事業です。踏切の拡幅に続く近鉄架道橋移設は難工事ですが、昨年7月に仮桁架設が完了し、現在、旧橋台を撤去して高さ3.2mの橋台を新設する工事が進行中です。
踏切道は、2.5mから11mに広がり、3mの歩道が設けられます。踏切東側に立地する橋北中学校へは、現在、鉄道の西側区域から243人の生徒が自転車で通学しています。全員が護国神社東の踏切を渡っていますが、そのうち97人は大谷踏切の完成に伴い、遠回りすることなく安全に通学できるようになります。
□令和7年度中の完成を目指す津興橋
岩田川の河口に架かる津興橋の架け替えは、市が主体となる事業としては極めて大規模なもので、総事業費47.7億円を見込んでいます。昨年春には橋脚1基が姿を現し、来春までに、残る橋脚2基と橋台を完成させる予定です。上部工、すなわち橋そのものの工事も昨年末に発注し、現在、工場で製作が進んでいます。いよいよ令和7年度中に新しい橋がその姿を現します。
□大型インフラ事業を進める力
都市の基盤となる大型インフラの建設には、明快なビジョンとともに巨額の予算と長い期間が必要です。昨年末に全通した中勢バイパス、本年完成予定の津松阪港の整備事業は、国が昭和の終わりから平成初期にかけて着手し、長らく工事が進んできたところを、粘り強く予算獲得要望を続け、令和に入ってついに住民の皆さま方と完成の喜びを共にすることができました。大谷踏切の拡幅と津興橋の架け替え事業については、長く温められていた構想を、平成の終わりに津市が財源を新しい国庫補助制度に求めることにより実現したものです。
今後は、志登茂川河口架橋と下部田垂水線の整備が三重県の事業として進められることが決まっており、長年、夢として語られてきた第3の江戸橋と鉄道との立体交差により市街地を東西に結ぶ道路が現実のものとなろうとしています。
大型インフラは完成して初めて期待された効果を提供することが可能になります。住民が受益の機会を逸することなく、時宜にかなった利便性を享受するには、早期完成という視点が何より重要です。事業化の実現と着実な事業推進に向け、今後も国、県との協調を図りつつ、戦略的に取り組んでまいります。
ケーブルテレビ123chと津市ホームページでは、前葉市長がこのテーマについて語ります
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