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市長コラム Vol.149(2024.12.1)

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三重県津市

■命を救う車両を前進させるために
津市長 前葉 泰幸

□道路啓開とは
大規模な地震が発生すると、沿道の倒壊家屋、津波で漂着したがれきや放置車両が道路を塞ぎ、橋梁(きょうりょう)等の道路構造物が大きく損傷するなど、救助活動に支障を来すことが想定されます。
路面を覆う障害物を路肩に寄せ、簡易な段差補修を行うなど最小限の処理で道を切り開き、緊急車両が通れるようにする作業が道路啓開です。

□東日本大震災の経験を南海トラフに活かす
津波により沿岸部に甚大な被害が生じた東日本大震災では、発生直後に立案され実行に移された道路啓開「くしの歯作戦」により、震災翌日には、太平洋沿岸の主要都市へのアクセスルートが確保され、その重要性が大きく認識されることとなりました。
国は直ちに、南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念される中部地方における道路啓開オペレーション計画を策定し、「中部版くしの歯作戦」として毎年改定を重ねています。

□国が指定する津市域の啓開対象道路
三重県においては、くしの軸に例えられるSTEP1で、比較的被害が少ないと想定される内陸部を南北に走る高規格幹線道路、直轄国道が広域支援受け入れルートとして確保されます。津市域では伊勢自動車道と国道23号中勢バイパスがこれに該当します。くしの歯に当たるSTEP2では、沿岸部にアクセスする東西軸として国道165号・306号、主要地方道津関線・津芸濃大山田線・久居美杉線、一般県道津香良洲線などが指定されています。STEP3が沿岸地域を走るルートで、国道23号、一般県道草生窪田津線、各市道が含まれます。
発災後、啓開対象ルートをパトロールし道路啓開作業に入るのは、地元建設業者です。あらかじめ17の企業にそれぞれ担当する区域が指定され、国(国土交通省三重河川国道事務所)、三重県、津市の3者は、道路管理者として一般社団法人三重県建設業協会津支部、一志支部と平素より協議を重ね、手順の確認を行っています。
津市が南海トラフ地震などの大規模災害に見舞われた場合、他県から到着する自衛隊、警察、消防の救援車両は、STEP1ルートを通って伊勢自動車道安濃サービスエリア(安濃SA)か名阪関ドライブインの進出拠点に到着し、態勢を整えます。ここからSTEP2が指定する2つの国道と7つの県道、一部の市道のいずれかを使用して被災地の救助活動拠点に向け前進します。
「三重県広域受援計画」が定める拠点は9施設。津市産業・スポーツセンター、安濃中央総合公園、HOWAパーク(中勢グリーンパーク)、町民の森公園(河芸)、北部運動広場、北消防署、白山総合文化センター、津市モーターボート競走場、道の駅美杉が候補地です。

□能登半島地震の気づきを地元で活かす
津市は能登半島地震支援時の経験を踏まえ、「津市災害時受援計画」の全面的な見直しを進めています。
その中で、速やかな救命・救急活動の展開には、発災後の初動段階で一刻も早く道路啓開に着手することが必要であり、そのために、被災自治体が国のオペレーション計画に掲げられたルートのどの区間を優先して啓開するかを前もって具体的に決めておくことが有効であるとの考えに至りました。
そこで、津市災害時受援計画に、被災後の道路状況に基づき、広域応援部隊の進出拠点と災害現場の救助活動拠点施設を結ぶルートを優先して確保することを記載し、その手法を新しく策定する「津市道路啓開計画」で明らかにすることにしました。

□広域受援の優先啓開ルート
津市は独自に「受援想定ルート」として安濃SAから自衛隊、警察、消防の救助活動拠点に至る13ルートと関ドライブインから消防の救助活動拠点に至る8ルートの併せて21の道路を特定し、メインルートが著しく被害を受けた場合の代替ルートも併せて地図上に落とし込みました。発災後、自衛隊、警察、消防それぞれの救出活動の拠点となる施設に至るルートに人と資機材を集中的に投入することにより、広域応援部隊の到着までの12時間以内に啓開を完了させます。

□地元消防・警察・自衛隊の優先啓開ルート
陸上自衛隊第33普通科連隊、三重県警察本部、津市消防の車両は、発災後、直ちに被災現場に向けて出動します。
受援想定ルートについての検討を重ねる中で、他県応援部隊の到着前に救命救助・消火活動を行う地元緊急車両の通行を先んじて確保する必要があることが議論の俎上(そじょう)に上がりました。そこで、緊急車両基地および負傷者を受け入れる医療機関周辺を「津市優先道路啓開路線」として津市道路啓開計画に書き込むことを国、県に提案し、了解を得ました。
津市独自の「救急想定ルート」として図面化したのは、(1)自衛隊久居駐屯地、三重県警察本部・津警察署・津南警察署、4消防署、8消防分署および香良洲分遣所の合計17カ所の周辺の道路、(2)8地区の被災地に向かう18のルート、(3)12の救急告示病院につながる道路です。

□命を救う体制を強化
こうして練り上げた災害時受援計画の改定案と道路啓開計画案は、現在、津市防災会議で検討が進められており、必要な修正を加え、来年2月に策定する予定です。
津市は、この計画の下、救援車両が被災地にいち早く出動できる環境を整え、訓練を重ねることにより、大規模災害時に命を救う体制を強化してまいります。

ケーブルテレビ123chと津市ホームページでは、前葉市長がこのテーマについて語ります
【HP】津市長コラム 検索

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