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自治体の皆さまへ

シリーズ人権―第109回―

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三重県津市

■Respect others~自らの偏見と向き合って~
今年は、夏季オリンピック・パラリンピックがフランスのパリで開催され、連日熱戦が繰り広げられました。人種や性別、宗教、国籍などが異なる選手が一堂に会し、自らの力を発揮し、戦う姿に感動しました。私はその中でも、体操男子の橋本大輝選手のある行動に心を打たれました。体操男子団体決勝の最終種目の鉄棒で、中国との熾烈(しれつ)な金メダル争いのなか、日本3人目の演技者である橋本選手が金メダル獲得に近づく会心の演技を披露し、会場内が大歓声に包まれました。そのとき、橋本選手は次に演技を行う中国の選手を気遣い、人差し指を口に当て場内に静まるように求めました。相手の失敗を願ってしまいそうな場面でも互いをリスペクトし、相手が演技に集中できるよう呼びかける姿がメディアで取り上げられ多くの反響を呼びました。
一方で、私はメディアの報じ方ひとつで偏った見方を植え付けてしまう場面もあるように感じています。私は子どもの頃、野球のWBCやサッカーのワールドカップ予選などがテレビで放映されると、家族みんなで日本代表の応援をしました。毎回応援に熱が入りましたが、いざ「日韓戦」となると試合前から異様なほどの対決の構図がメディアによって報じられることで、私は知らず知らずのうちに韓国に良い印象を持たなくなりました。その後、ニュースや新聞などのメディアで外交問題による日韓関係の悪化を目にすると、「日韓戦」の印象と政治の問題を結び付けて見るようになっていました。当時の私は、メディアで報じられている一面のみで物事を判断し、韓国にルーツのある人々のことを偏った見方で見ていたように思います。
その自分の見方が変わるきっかけとなったのは、社会人2年目に受講した在日問題やヘイトスピーチ※に関する研修でした。当時は、ヘイトスピーチ解消法は制定されておらず、各地で問題になりつつある頃でした。その研修では、ある地域の駅前で、拡声器を使い、特定の民族や国籍の人々に向けて過激な言葉で排除・排斥する人々の映像を視聴しました。日本でこのような活動が行われていることに衝撃を受け、さらに県内でも同様の活動が行われていることを知り言葉を失いました。なぜこのような行動に出るのか自分なりに考えているとき、在日問題についても韓国という国についてもほとんど知らない自分に気付きました。そして、韓国にルーツのある人々のことを偏った見方をしていた自分も心の中はあの人たちと同じなのではという考えに至りました。そんな自分を変えたいと思い、学び始めました。
私は、在日問題を含むさまざまな人権課題に関する研修に参加したり、実際に韓国にルーツを持つ人にお会いして実体験などを聞いたりしていく中で、自らの見方や考え方を見つめ直してきました。自分のルーツや価値観と違う人たちと実際に交流し、その人たちが大事にしていることや考え方に触れると「そんな考え方もあるのか」と自分の価値観が広がっているのを感じます。これからも社会の課題に関心を持ち、互いの文化や考えを知り、尊重できる自分でありたいと思います。(30代・男性)
※特定の民族や国籍の人々を排斥する不当な差別的言動

問い合わせ:人権課
【電話】229-3165【FAX】229-3366

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