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シリーズ人権 第106回

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三重県津市

■私のばあちゃん
20年ほど前に亡くなった私の祖母は認知症でした。祖母とは同居しており、両親が共働きであったため、よく私の面倒をみてくれた「優しいばあちゃん」でした。認知症の症状が出始めた頃は「物忘れを頻繁にするようになってきたかな」という程度でしたが、やがて言動もあやふやになり、徘徊(はいかい)するようになりました。認知症の症状を疑ってすぐに病院へ行き、適切な治療を受けていれば、もしかしたら進行を遅らせることができたかもしれません。しかし、数十年前のことで理解も乏しく、「ぼける」ことは恥ずかしいことという認識が社会にあったように思いますし、私の家族にもそうした思いもありました。
当然、私も含め家族は認知症の知識を持ち合わせていませんでしたので、祖母の行動が理解できず祖母に対しての当たりも強くなっていました。徘徊のたびに探し回ることが必要ですから、私も「厄介なばあちゃん」だという気持ちさえありました。現在は他界した祖父も、自分の思いが祖母に伝わらないもどかしさや、いら立ちが言動にも出ていました。これまで仲むつまじかった祖父と祖母なので、複雑な思い、大変な思いをしていたと思います。
同じ頃、私は介護保険施設で職業体験の機会があり、食事、排せつ、入浴など身の回りのことを全くできない認知症の人の介護現場を目の当たりにしました。祖母以外にも多くの患者がいることを実感するとともに、施設の人たちが本人や家族の生活を支えていることに気がつきました。
それから数年後、祖母は自分の身の回りのことをできなくなり施設へ入所しました。祖母も適切な介護や医療を受けられるようになり、家族の負担も軽くなったはずなのに、私自身は、もっと祖母のために何かできたのではないかと思いながら過ごしていました。
現在では、認知症に対する社会の理解が進み、家族や病院・介護施設の職員だけでなく、民生委員・児童委員や地域住民、一般の事業所など地域全体で見守る時代になってきました。私自身も、地域で認知症の人などにできる範囲で手助けする「認知症サポーター」の養成講座を受講する機会が職場であり、認知症の特徴や患者への接し方などを学びました。認知症の人と接する時の心構えとして「誰よりも苦しいのも悲しいのも本人」であり、自然な支援態度をとることが重要であると知りました。祖母に強く当たっていたことが認知症の進行を早めたかもしれない、当時の私にこうした知識があれば祖母に対して優しい振る舞いができたかもしれないという自責の念は今も消えません。
日本で高齢者の人口が最も多くなるのは2040年頃といわれています。また、国の調査によると介護が必要になった原因の第1位は認知症ということですから、認知症患者はさらに増えると予想されます。しかし、認知症を患ったとしても、周りの理解やサポートがあればその人自身や家族も、もっと安心して暮らせるはずです。誰もが不安なく年を重ねていける社会であるように願うとともに、私自身が祖母に対してできなかった手助けを、できる範囲で地域や家族の中で行っていきたいと思います。
(40代・男性)

問い合わせ:人権課
【電話】229-3165【FAX】229-3366

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