文字サイズ
自治体の皆さまへ

市長コラム Vol.141(2024.4.1)

26/31

三重県津市

■保育を護(まも)る
津市長 前葉 泰幸

□突然突き付けられた閉園の知らせ 
令和5年6月26日、美里さつき保育園を運営してきた社会福祉法人ライトは、財務状況が悪化し事業継続が困難になったとして、6月末をもって保育園を閉園することを津市に伝えてきました。
保護者に通知されたのは27日の夜。閉園わずか3日前に、翌日の緊急保護者会で園が事情説明を行うことを知らせるメールが一斉配信されました。
津市の子育て推進課は在園児の保育の継続を図るべく直ちに調整に入りました。しかし、周辺保育園の空き状況は数名分しかありません。そこで、保育環境の変化を可能な限り緩和するための緊急対応策として、美里さつき保育園の園児全員が転園しても必要な面積基準を満たす市立白山こども園で一括して受け入れる方針を固め、28日の緊急保護者会に同席し、保護者の皆様に説明しました。
7月から白山こども園に通い始めた園児は、みさと幼稚園への転園を希望した1人を除く57人。1~5歳児は旧美里さつき保育園でのクラス編成のまま、津市の会計年度任用職員に採用した旧園の11人の保育士が担当し、美里~白山間約10キロを運行する臨時送迎バスにも同乗するようにしました。
それでも、突然の閉園通知から転園に至るまでの数日間を不安な気持ちで過ごされたご家庭の心理的なご負担は計り知れぬほどのものだったに違いありません。翌週、白山こども園を訪問し、ニコニコと元気に体を動かす園児たちの傍らで、5歳児担当の保育士から「広い園庭とたくさんの遊具に満足している」と聞いて安堵(あんど)したものの、1歳児クラスの保育士からは「給食を食べる量が減り心配している」との報告を受け、小さな心に与えた影響の大きさに、大人の責任の重さを痛感しました。

□美里の保育を模索する日々
その後も津市は白山こども園以外での保育を希望する保護者には可能な限り調整を続け、7月15日の21人を皮切りに、特に転園者の多かった久居の市立ひとみね保育園には旧美里さつき保育園の保育士の2人が再度異動する措置を講じました。
並行して、美里地域における令和6年度からの保育体制も整えておく必要がありました。津市は、市内の私立保育園の経営者に園引継ぎの可能性について打診し、引き受け手が現れない場合は、市立の保育園を美里に新設する覚悟を固めました。早々に具体的な構想の検討を開始し、8月中旬には、市立みさと幼稚園を令和6年度からこども園化して保育園児を受け入れる計画を作り上げていました。

□新たな経営者の登場
その一方で、大阪府において4つの保育所を運営する「特定非営利活動法人あいうえお」が、ライトに旧美里さつき保育園を引き継ぐ意向を示し、園舎と敷地の売買に向けた調整が始まろうとしていました。
ライトの法人本部は愛知県岡崎市ですが、市域を越えて津市や静岡市でも事業を行っていることから、法人の設立に関しては岡崎市長ではなく愛知県知事の認可を受け、所轄庁である愛知県がライトの基本財産である土地建物の処分を承認する権限を有しています。保育園の売却に際し、ライトは愛知県から他の債権者の同意を得ることを求められ、本年1月15日、ようやく適正な基本財産の移転として承認されました。
津市は市外の事業者であるあいうえおの代表者に対し、新たな社会福祉法人を津市内に設立した上で保育事業に参入することを強く勧めていました。前経営者であったライトは県をまたいでいくつもの施設を経営していたことから津市には監督権限がなく、津市の保育園単体としては健全に運営されていることが確認できても、法人全体の財務状況を把握することは難渋を極め、閉園の予兆を察知することができませんでした。その教訓を踏まえ、美里の新しい保育園は津市が直接監査できる独立した法人によって経営されることを求めたのです。
1月26日、NPO法人あいうえおは新たな「社会福祉法人あいうえお」の設立認可申請を津市に提出。2月15日に津市の認可を受け、3月19日に三重県が保育所の新設を認可したことにより、「あいうえお保育園」の4月開園が決定しました。
新設園の定員は38人。新年度から旧美里さつき保育園に在籍していた20人が美里に戻り、新たな入園希望者も加わって、リニューアルされた園舎いっぱいに園児たちの姿があふれることとなりました。

□復活した放課後児童クラブ
ライトが保育園舎に隣接する施設で運営していた放課後児童クラブも、保育園同様、昨年6月末をもって閉鎖されました。津市教育委員会は、直ちに、近くのみさとの丘学園の図書室を放課後の子どもたちの居場所として確保し、旧クラブの支援員の一人を津市の会計年度任用職員に採用して地元民生委員児童委員協議会とボランティアの方とともに見守りを続けました。夏季休暇に入り、安濃町のKUSAWA KIDSが児童9人を受け入れてくださる中、保護者たちは自らクラブを設立する考えを明らかにし、津市は、公設民営のクラブを開設できるよう旧辰水小学校体育館2階のミーティングルームを準備しました。
子どもたちの保育環境を護ることを第一に考える地域の熱意は、新たな経営者に伝わったものと思われます。保育園の新たな経営者あいうえおは放課後児童クラブの運営実績はないものの、美里に根付いた活動を展開したいとの思いから、放課後児童健全育成事業にも乗り出すことを決め、1月23日、事業開始届を津市に提出しました。こうして、美里の放課後児童クラブも元の施設で復活することとなり、4月から14人が利用を始めます。

□地域で育む
保育施設の突然の閉鎖にもかかわらず、子どもたちが安心して過ごせる環境を新年度までに確保できたのは、地元の皆さまが真剣に善後策をお考えくださったからに他なりません。今後も市民の皆さまとともに大切な子どもたちを守り育てる環境整備に取り組んでまいります。

ケーブルテレビ123chと津市ホームページでは、前葉市長がこのテーマについて語ります
【HP】津市長コラム 検索

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU