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市長コラム Vol.144(2024.7.1)

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三重県津市

■障がい福祉サービスの民営化~自主経営に移行する津市社会福祉事業団~
津市長 前葉 泰幸

□公的な福祉施設の運営委託
社会福祉事業団は、都道府県あるいは市が設置した社会福祉施設を運営する組織として、自治体が全額を出資して設立した社会福祉法人です。
1971年に示された国の方針に基づき、全国の自治体が直営施設の事業団委託を進める中、津市社会福祉事業団(事業団)は昭和54(1979)年の設立以来、乳幼児から高齢者、障がいのある方などに幅広いサ-ビスを提供し、市民福祉の先駆的役割を担ってきました。

□社会福祉施設をめぐる環境の変化
2000年代に入ると日本の福祉は大きく変化し、行政が福祉サービスの対象者と内容を定める措置制度から、利用者本人が必要なサービスを選択し、自らの意思で事業者と契約する利用者本位の制度へと転換しました。民間事業者の参入が進み、利用者のニーズに応じて多様なサービスが提供されるようになり、公的な社会福祉施設に指定管理者制度が導入され、効率的かつ安定的な運営とサービスの向上が図られました。

□施設運営の受託者から指定管理者へ
平成18(2006)年、事業団は市町村合併を機に、従前より受託してきた旧児童福祉会館(垂水)における児童福祉サービスと、旧町村が社会福祉協議会に委託していた施設を含む5つの作業所(垂水、香良洲、芸濃、一志、白山)およびグループホーム(白山)における障がい福祉サービスの指定管理者に選定されました。
これら公の施設の指定管理期間は、通常、3年から5年に設定されますが、事業団としては、環境の変化に対応することが困難な利用者の方々に今後も継続的にサービスを提供してご安心いただけるよう、期間を区切って施設の管理を委ねられる立場から、自ら土地建物を保有する設置者となって自立することを望んでいました。

□児童福祉サービス分野での自立
平成28(2016)年、児童福祉法が改正され、国は、こどもたちにできる限り家庭的な養育環境を整えるために、少人数グループでのケアを可能にする施設の小規模化・ユニット化を強力に推進しました。
家庭的養護の実現には、集団生活を想定して建てられた施設本体を根本から見直す必要があります。事業団はそれまで事業活動による収支差額を積み立ててきた資金を活用することで、自ら新しい乳児院と児童養護施設を建設し、平成30年度より自主事業として運営を開始しました。
これを機に津市から交付を受けていた年間約5,000万円の運営補助も廃止され、事業団は財政的に自立した形となりました。

□障がい福祉施設の老朽化
津市は6つの障がい福祉サービス事業所において生活介護、就労継続支援、日中一時支援などを行っています。そのうち、コスモス作業所については50年前に建設された一志保育園を転用しており、早急な建て替えが課題となっていました。
民間の社会福祉法人が作業所を建て替えるなど、施設を新たに整備する場合、国県に経費の最大4分の3の補助金を申請することができますが、津市がコスモス作業所を建て替える場合はその対象外となります。運営面においても、自治体が設置する事業所の報酬は民間と比較して3.5%(年間760万円)減額される公立減算の仕組みが、今後も不利に働き続けます。
令和3年8月、津市は、公設の社会福祉施設を取り巻く環境の変化を踏まえ、障がい福祉サービス事業の直営を廃し、民営化する方針を固め、市議会と協議の上、利用者と社会福祉法人への説明会を実施しました。

□利用者と事業者の声
利用者の多くは、建て替え予定のコスモス作業所のみならず、他の施設についても、現行のサービス水準の維持を強く望みました。常に介護が必要な重度の方への生活介護サービスは、当時の総定員471人のうち100人が市の直営施設を利用するなど、6施設は障がい福祉サービスの重要拠点となっていることから、安定した環境で安心して過ごしたいという切実なお声が多く寄せられました。
一方で、民間事業者からは、6施設のみ市が経営するのは公平性に欠けるとして、直営事業参入の機会均等を求める発言がありました。

□サービス水準の維持を第一に
津市は、現行サービスの継続を求める利用者の暮らしの充実を最優先に考え、6施設において一体的に適正なサービスを提供することが可能な形で民営化を行う必要があると判断しました。
直営施設を民間事業者に売却する場合、市民の共有の財産の処分という観点から、一般競争入札により歳入の最大化を図ることが原則です。令和5年8月、津市はコスモス作業所の移転先となる市有地の購入および施設の5年間の賃借料の総額を競争入札にかけて決定する旨公告しました。
質問回答や現地説明では、複数の事業者から関心が寄せられましたが、同年11月に実施した入札の応札者は津市社会福祉事業団1者でした。津市は同事業団を落札者として決定し、翌12月、売買と賃貸借の契約を締結しました。これにより、津市障がい福祉サービス事業所の令和7年4月からの民営化が決定しました。

□自主経営への転換
これまで指定管理者として6つの事業所の運営を託されてきた事業団は、重度の利用者への手厚いサービス提供により収支不足となる施設はあったものの、他の施設の収益で補填することにより、津市から指定管理料を受け取ることなくサービス報酬のみで経費を賄ってきました。事業団自らが施設の運営者としてコスモス作業所を新築することにより基本財産の充実が図られることに加え、整備に要する費用は内部の保留金を充てる以外に国県からの建築補助の対象となる可能性があります。サービス報酬についても、自主経営に移行する令和7年度からは公立減算の対象から外れ、財務基盤が強化されます。

□事業団が手掛ける一志の新たな福祉の拠点
新しいコスモス作業所は、事業団によって「とことめの里一志」パターゴルフ場跡地に建設されることになりました。日帰り温泉施設、図書館、保健センターなどを備える複合施設「とことめの里一志」には、昨年10月、一志放課後児童クラブも改築移転しています。新コスモス作業所の開所により、一志地域の福祉・健康・教育の拠点として、その機能がさらに高まることが期待されています。

ケーブルテレビ123chと津市ホームページでは、前葉市長がこのテーマについて語ります
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