■「学びたい」という思いが実現できる場があること
生まれ育った国を離れ、日本で暮らすことになり、看板などに書かれた文字も、聞こえてくる言葉も分からない中で生活している子どもたち。
その子どもたちが、初期日本語教室「きずな」で日本語を教えてくれる人とのつながりや温かさの中で、「自分の居場所がここにある」と感じていきます。そして、「もっと日本語を覚えたい。おうちの人に覚えた日本語を伝えたい」と鉛筆を握り、ひらがなを何度も何度も練習する姿があります。
また、子どもの頃、差別や貧困などの理由で、学校で学ぶ機会を奪われ、「今まで病院へ行っても、受け付けの人に名前を書いてもらっていた。識字教室でひらがなを勉強して、初めて自分で名前を書いた時、看護師さんがその受け付け用紙を見て、私の名前を呼んでくれた。本当に嬉しかった。もっともっと勉強したい」と話す人の姿があります。
これらの姿や言葉から学ぶことは、単に知識を身に付けるだけでなく、自分に自信を持ったり、これからの自分の未来に希望を持ったりすることにつながるということがうかがえます。
今回のあけぼのでは、みえ夜間中学体験教室「まなみえ」に参加する人たちの思いや願いを紹介します。
「まなみえ」は、三重県教育委員会が、今年4月に県立夜間中学を開校するに当たり、その理解を深めることを目的に、さまざまな事情から中学校で十分に学習することができず、「学びたい」「もう一度学び直したい」と思っている人を対象に、令和3年度から実施している体験教室です。
夜間中学は、年齢や国籍などを問わず、多様な人たちが学び合う場の一つです。そこに集う人たちの、学ぶことに対する思いや願いには、一人一人さまざまな背景があります。
全ての人の教育を受ける権利が保障された社会を実現していくために「今、私にできること」を考えてみませんか。
■人権コラム 全ての人の学びを保障するために
皆さんは89万8,748人という数字が何を表すか想像できますか。これは日本国内において、小学校や中学校を卒業していない人の総数です。
令和2年の国勢調査によると、小学校を卒業していない未就学者が9万4,455人、最終学歴が小学校である人が80万4,293人もいることが明らかとなりました。この中には、戦後の混乱期で義務教育を修了できなかった高齢者だけでなく、若い世代や外国につながる人も含まれています。
こうした現状に対応すべく、国では、平成28年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」が成立し、義務教育を修了していない人や十分に受けられないまま卒業した人たちの学び直しの場として、少なくとも各都道府県に1校は夜間中学が設置されるよう、さまざまな支援を行っていくこととしています。
夜間中学では、平日の夕方から夜にかけて授業が行われ、校外学習や修学旅行などの年間行事もあります。そして、全ての課程を修了すると中学校卒業となります。文部科学省によると、令和6年4月時点で、全国に53校の夜間中学が設置されており、三重県においても今年4月より県立の夜間中学である「みえ四葉ヶ咲(よつばがさき)中学校」が津市内に開校します。
この中学校では、義務教育を修了していない人や十分に受けられなかった学齢期を過ぎた人を対象とする「夜間中学コース」と、不登校や不登校傾向にある現役中学生を対象とする「学びの多様化学校コース」があり、異なる年齢や学年の人と共に学び合い、個々に応じた授業の実現を図りながら、中学校の学習内容を学ぶことができます。
夜間中学の開校により、学びの選択肢が一つ増え、誰一人取り残されない学びを保障するための取り組みが広がっています。
第38号
令和7年2月16日発行
問合せ:教委人権教育課
【電話】229-3253【FAX】229-3017
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