■誰もが「学びたい」をかなえられる学校
~みえ夜間中学体験教室「まなみえ」を通して~
今回は、「まなみえ」津会場に参加している人から、参加しようと思ったきっかけや、学ぶ中で芽生えてきた思い、四葉ヶ咲中学校※への期待などを聞かせていただきました。皆さんは参加者の話をどのように感じますか。全ての人の学びが大事にされ、誰もが「学びたい」をかなえられる社会、「学びたい」と思える社会の実現に向けて考えてみませんか。
※四葉ヶ咲中学校について詳しくは、巻頭コラムでご紹介しています。
○この場にいることが「好き」と思うようになりました
僕は小中学校に行ったことがありません。学齢期は過ぎているけれど、義務教育を受けたいと思っていた時に、「まなみえ」のことや三重県に夜間中学ができることを聞きました。勉強することや、人と関わることは不安でしたが、「夜間中学で義務教育を受けたい」と思い、そのための練習として参加しました。
僕は、人と関わるときにはスイッチを入れて頑張っています。でも、スイッチが切れると人の顔を見ることがしんどく感じることもあります。それでも「まなみえ」に来てよかったと思えたのは、親身になって教えてくれる先生やスタッフ、それに仲間がいるからです。これまで会話するのは、年上の人ばかりで、お世話になる相手だけでした。でも、ここには年齢差があっても、同じ場所、同じステージに立って、僕と同じように学ぼうとしている仲間がいます。だから、この場にいることが「好き」と思うようになりました。
四葉ヶ咲中学校では、新しく出会う人たちとコミュニケーションがとれるか心配な気持ちもありますが、「まなみえ」の仲間やこれから出会う人たちと過ごすのも楽しそうだと思っています。
○未熟なままの自分を許してくれるのが嬉しいです
私は、中学校に入ってすぐに不登校になり、それからの3年間はずっと学校に行っていません。その後、通信制高校に入りましたが、人との関わりもほとんどなく、勉強も分からないまま卒業しました。その後、大学に行くために受験勉強をしましたが、結局続けることはできませんでした。
高校を卒業している私だけど、学び直したいと思っていたときに、「まなみえ」のことを知り、自分が本当に行きたかったのはここだと思いました。
私は、今19歳です。成人年齢を超え、大人にならなければという焦りがありました。でも、ここでは未熟なままの自分を許してくれるのが嬉しいです。そして、スタッフの人たちの楽しそうな姿と出会い、大人になるのもそんなに悪くないかもしれないと思うようになりました。
「まなみえ」の授業で技術の時間があり、私は手先を使って物を作ることが好きだと改めて感じています。もともと学校が嫌で行かなくなった私だから、また嫌になってしまうかもと不安もあります。でも、来年度は四葉ヶ咲中学校で学びたいと思っています。
○家の外にも自分の居場所があることが嬉しいです
僕は中学1年で不登校になってから30年近く、ほとんど外に出ないような生活をしていました。勉強もしていなかったし、社会との関わりもなく、外には全く居場所がありませんでした。
「このまま引きこもっていたらあかん」という思いがあり、社会や人と関わるきっかけを探していたとき、インターネットで見つけたのが「まなみえ」でした。「まなみえ」に参加することは不安だらけでした。だけど今は、他の人たちと勉強でき、家の外にも自分の居場所があることが嬉しいです。
4月から四葉ヶ咲中学校に通うことは、もう一度チャレンジを始める気持ちです。僕は毎日家を出て学校に通うことに不安はありますが、学校にちゃんと通うことを実現したいです。今は、「まなみえ」に通った2年間があるから何とか大丈夫かなと思えるようになりました。
〔担任の宮本さんに聞きました〕
○私たちが学ばせてもらっているんです
初めはみんな緊張して顔がこわばり、話しかけても言葉は返ってきませんでした。でも、「まなみえ」で過ごすうちに、表情が和らぎ、自分から仲間に話しかけるようになってきました。前年から参加しているメンバーは、自分から後輩に関わっていきます。それに、四葉ヶ咲中学校のPRイベントに自ら参加し、一般の人にも話しかけています。そんな姿は、1年前、2年前には想像がつかなかったものです。そういう姿を見るのが担任の私にとって何よりの楽しみです。
キラキラした目で食い入るように授業を受けるみんなの姿を見ると、私も頑張ろうという思いになります。参加者の皆さんから、「まなみえ」に関わる私たちが学ばせてもらっているのです。
〔三重県教育委員会の中西さんに聞きました〕
○「もっと学びたい」という思いを実現する学校を生徒と共につくりたい
これまで「まなみえ」に参加した人たちは、共に学ぶ中で、互いに声をかけ合い、仲間とのつながりを築いていったように感じます。そして、学ぶことを通し、自分がやりたいことを見つけたり、将来への展望を持ったりした参加者もいます。学びや経験を通して参加者に芽生えた「もっと学びたい」「もっとやってみたい」という思いは、「四葉ヶ咲中学校で学びたい」という思いへとつながっています。次年度からは、四葉ヶ咲中学校で学ぶ一人一人が、自分の願いや夢を見つけ、実現を目指して学び続けられる学校を生徒と共につくっていきたいと思います。
●取材者の感想
「まなみえ」で学ぶ参加者の表情には、学ぶことへの喜びがあふれていました。また、学ぶことに対する思いや願い、そして、その背景にあるさまざまな経験も聞かせていただき、学ぶことは楽しいこと、そして、学ぶことは自分の生き方につながると教えてもらったように思います。誰もが「学びたい」という思いをかなえられる社会は、誰もが自分らしい生き方ができる社会ではないか。そのようなことを私自身が考えさせてもらうきっかけとなりました。
第38号
令和7年2月16日発行
問合せ:教委人権教育課
【電話】229-3253【FAX】229-3017
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