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[特集]芸術の秋 ー自身の描きたい思いをキャンバスに投影する(1)

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三重県菰野町

~自分が見た景色の印象を絵という形で残したい~

◆影や光までも描く風景画
信じられないかもしれませんが、上部に掲載した風景は写真ではなく、全て人の手で描かれた油彩画です。油絵の具で無数の色を創り出し、何気ない日本の原風景を精緻(せいち)な筆使いでキャンバスに投影する。写真とも見間違うほど計算され尽くしたその作品は、影や光、風が通り抜ける様子まで投影されています。そんな緻密な作品を描きあげる菰野町出身の油彩画家曽根茂さんをご紹介します。

◆菰野町で生まれ育まれた感性
菰野第二区に生まれた曽根さんは大学進学までの間を菰野町で過ごしました。田んぼに囲まれた景色の中で育ったので、水のおいしさ、夜空の美しさ、鈴鹿おろし、カエルの声――――菰野町を離れた現在も強く印象に残っているといいます。得意なことを伸ばそうという親の教育方針もあり、小中学生の頃から模型製作や絵を描くことにのめり込んでいき、町内の写生大会でもしっかりと下見をした上で臨み、入賞したことがあると曽根さんは語ってくれました。その頃から「そっくりに描くこ日時:上手」だと考え、とにかくリアリズム志向でいかにそっくりに描けているかを追求していったと振り返ります。
大学進学後は、現在も趣味として続ける考古学を専攻するも絵画の世界に強い憧れを抱くようになりました。そして、芸術大学や美術大学へ行くこともなく、全くの独学で飛び込んだ画家としての世界でしたが、運よく画商に作風が受け入れられたこともあり「油彩画家 曽根茂」としての活動をスタートさせます。

◆油彩画で作り上げるリアル
油絵と聞くと、絵の具を塗り重ねて描く抽象的な絵画を思い浮かべるかもしれませんが、本来は肖像画などをよりリアルに描くために発明された画材です。絵の具自体に含まれる半透明の樹脂成分が色の深みにつながり、気に入っていると曽根さんはいいます。絵の具を混ぜ合わせ、その景色に合った色のグラデーションを作り上げていきます。
「リアルと言いつつ、実際の景色をそのまま描き写しているわけではありません。目で見た風景を平面に描くことが難しく、写真をそのまま投影してもよい作品には決してなりません。自身の頭の中で景色を補完し、実物とのギャップを埋めながら描いています」実際の制作現場では、描きたい風景のある現地を訪れ、そこで得た印象とリアルな表現とのバランスを組み立て、再構成してキャンバスに投影していきます。そのため、下絵をつくる時に一番神経を使うそうで、現在でも目に見える風景に足りていないものを常に探しながら描いているといいます。
「絵にしたいと思うのは菰野で親しんだような昔ながらの田園風景。ただ全国的にその姿はどんどん消えていっています。だから、自分が見てきた景色の印象を絵という形でしっかりと残したい」曽根さんは、緊張感がなくなるため、同じ景色は二度と描かないと決め、失われつつある昔はどこにでもあった日本の田舎の原風景を油彩画というかたちに投影して描き続けています。「平面上に絵を描き表すことは根源的な面白さがあります。絵を通じて日本の原風景の美しさを伝えられるよう、これからも描いていきたい」と思いを語りました。

▽油彩画家 曽根茂(そねしげる)
PROFILE:昭和46年生まれ、51歳。菰野第二区(中菰野)出身。現在、京都市在住。菰野小学校、菰野中学校、四日市高校を経て京都大学を卒業後、画家としての活動をスタート。平成12年に昭和会展優秀賞受賞。全国各地の大丸、松坂屋、三越など大手百貨店で定期的に個展を開催し、好評を得る。平成24年には、パラミタミュージアムのギャラリーで個展を開催。

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